毎年冬の終わりに開催されるモバイル業界最大のイベント「Mobile World Congress(MWC)」が今年もスペイン・バルセロナで2月末に開かれた。無線通信機器大手のEricssonはここで、Amazon Web Services(AWS)、Quantaとの提携を発表した。
同社は2015年末には宿敵といわれてきたCisco Systemsとも戦略的提携を交わしており、これについても成果を発表した。モバイル業界の変化を体現するEricssonの取り組みをまとめる。
MWCはまだ、無線通信が北欧の企業(EricssonとNokia)で独占されていたころに、暖かいところでカンファレンスをというのが始まりだ。だが「3GSMA World Congress」というイベント名で南仏カンヌで開催されていたほんの10年ほど前と比べると、業界は様変わりした。
多くは「iPhone」とAppleがもたらしたモバイルアプリビジネス、その後のAndroidによるものだ。そして今年のMWCには過去最高の10万人が来場、この数字はモバイルが通信事業者、通信機器メーカー、端末メーカーだけのものではなくなったことを裏付けている。
Ericssonはカンヌ時代から毎年初日の朝、プレス発表会を行う。当時は双璧をなしていたNokiaも初日の朝にイベントを開くため、記者を取り合った時期もあったが、そのNokiaは端末事業を切り離してしまった(Nokiaのネットワーク事業は前日夜にイベントを開く)。このように、創業は1876年、140年にわたり大変革の中を生き延びてきたEricssonだが、今年の同社のプレス発表会では”Disrupt””Transformation”など、ITのイベントにいるような言葉が次々と発せられた。
Ericssonの最高経営責任者、Hans Vestberg氏
「技術の進化は光のような速度で進んでいる。場所をつなぐ(固定電話)のに100年かかったが、人のコネクト(携帯電話)には25年、現在モバイル加入者は50億人だ。2017年末までにモバイルブロードバンド人口は10億人に達するだろう」とEricssonのプレジデント兼CEO、Hans Vestberg氏は話す。
もちろんそれで終わりではない。「2021年には280億台のデバイスが接続される」――IoTだ。ICTは「人、産業、社会とすべてに組み込まれていく」(Vestberg氏)。
IoTと切っても切り離せないのがクラウドだ。ネットにつながるものは携帯電話から車、メーター、家電とさまざまなモノに拡大し、それに合わせたネットワークを構築する必要がある。そのような新しいモバイルの時代に向けて、「Ericsson自身も変化している」とVestberg氏は言う。同社は10年計画の下、ネットワークに加え、IT、メディア、産業との協業と拡大を図っているところで、これにより顧客である通信事業者の変革を支援するという。