ここでEricssonは2年前にクラウド&IPという新事業部を立ち上げた。そして2015年のMWCではIntelとの提携を発表、Intelの「Rack Scale Architecture」をベースとしたハイパースケールサーバ「Hyperscale Datacenter System 800(HDR 800)」を発表した。
HDR 800は同社のクラウド戦略のインフラ部分を担うが、今年Ericssonは、Facebookが率いるデータセンターオープンソースプロジェクト「Open Compute Project(OPC)」に加入し、OPCの仕様に基づくハードウェアの製造で台湾のQuantaとの提携を発表した。
今後、QuantaはEricsson向けにデータセンター向けのハードウェア製造を行う。Quantaのシニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのMike Yang氏は、「ハイパースケールやOPCはデータセンターを土台から変えている。理由は単純で、開発のリスクが減り、導入から拡張までを短期間で行えるからだ」と語った。
IT側のクラウド化では、この分野の草分け的存在で最大手のAWSと手を結んだと発表した。AWSはNetflixなどのベンチャー企業、GEなどの既存エンタープライズを顧客に抱えるが、同社でワールドワイドパートナーエコシステム担当バイスプレジデントを務めるTerry Wise氏によると、「この1年~1年半、通信事業者からの関心が高まっている」とのことだ。
「通信事業者は、AWSの顧客企業のようにわれわれのクラウドプラットフォームを利用して、イノベーションを起こしたい、迅速に新しいサービスを展開したいというニーズがある」とWise氏。そこで業界最大手であるEricssonと組むことにしたいう。

左からAWSのワールドワイドパートナーエコシステム担当バイスプレジデント、Terry Wise氏、Quantaのシニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのMike Yang氏、Ericssonのシニアバイスプレジデント兼クラウド&IP事業部トップのAnders Lindblad氏
この提携の下、EricssonとAWSはEricssonの顧客である通信事業者のパブリッククラウドの利用を進めていく。Ericssonは6万6000人のプロフェッショナルサービスを持つが、AWSに精通したコンサルタントの育成を進めるという。
MWCの会期中、第1弾としてオーストラリアの通信事業者Telstraが自分たちのラボにクラウドイノベーションセンターを設立することを発表した。
Telstraでマネージングディレクターを務めるMike Wright氏は、「これまでネットワークが成長し、キャパシティに対応するためにプランニングからスタートして数カ月を要する作業が必要だった」と課題を述べる。
「クラウドの考え方を取り入れて、ソフトウェア機能がある単一のプラットフォームを持てるようになれば、トラフィックの需要にシフトがあったり新しい機能のニーズがあったりした際にも迅速に対応できる」と狙いを語る。実際、「トラフィックに占める動画の比率が急増しており、IoTなど新しいユースケースも出てきている」と述べ、これまでのような「数カ月」では対応できなくなっているという。
Telstraのイノベーションセンターでは、EricssonとAWSの2社がリソースをつぎ込み、通信事業者によるパブリッククラウドの利用を模索、検証する。データの安全性などが大きなテーマになるという。Telstraによると、パブリッククラウドに投資するというよりも、「どうやってパブリッククラウドに接続するか、活用するかへの投資」とのことだ。