もう「OSS対MS」の構図は感じない
牛尾:ところで、MSの最近の印象はどんな感じですか?
吉羽:2~3年前からだいぶ雰囲気変わってきたなと感じています。外から見て、オープンソースとの付き合い方も変わってきたように見えます。オープンソースのコミュニティーにも普通に出入りしている。なので、昔ほど「OSS vs MS」という構図はないですね。これはいいことだと思います。
とはいえ、もっとできることがあるのでは。例えば、OSSの世界と別の用語を再定義するのを辞めるとか。あれはよくないです。MSのマニュアルなどを読んでいて、OSSの世界とは別の言葉で説明されているとピンと来るまで時間かかってしまうんです。
高添:Azureを売る立場から見ても、実はピンとこないことはあるんですよ。確かにそういうところは改めていかないとですね。
前佛:私はMSというと、元CEOのSteve Ballmerがものすごく強気な発言をしていたイメージがあります。あれは良い意味で、会社として勢いのあることだとは思います。今は、Dockerへの取り組みなどを見ても、変わってきたという印象です。昔は全部自分たちでやるというイメージだったのがそうじゃなくなった。
ビジネスの競争が激しいエンプラ企業にこそDevOpsを
牛尾:さて、これからDevOpsはどう進んでいくと思いますか。
吉羽:クラウドのところはキャズムを越えた感がありますが、Dockerはまだこれからです。チャレンジはまだまだ増えるでしょう。分散コンピューティングがさらに増えていけば、運用はもっと大変になるので。越えられない壁の手前にいるような状況ですかね。
欧米ではエンタープライズの企業、金融機関などもどんどんDevOpsに取り組んでいます。DevOpsは柔らかいベンチャー的な企業でないとできないというものではない。むしろビジネス的に競争の激しい分野にいる会社が精力的に推進しているイメージです。実際、そういう企業がDevOpsに移行すると効果が出やすいというのもあるでしょう。
日本ではどうしても、DevOpsのようなものは“黒船がやってきた”的に捉えられてしまいます。そうなると欧米より2~3年遅れることになる。それでは日本は出遅れてしまいます。
牛尾:実は、アーリーアダプターと呼ばれる層の初速、つまり新しいものへの食いつきは欧米も日本も変わらないという話があります。日本はキャズムが長く、レイトマジョリティの域に入ってから一気に増える傾向がある。これはすごくもったいない。
高添:日本は他社の事例、実績がないとダメ。これはビジネス的に間違いだと思います。自社で1番を取りに行かないと。同業他社の事例を待っていたら、3年遅れの技術になってしまいます。それでは戦えません。
2016年の「de:code」では“衝撃的なDevOpsトラック”を用意
牛尾:ところで、冒頭少し紹介したように、日本マイクロソフトは「de:code 2016」というイベントを今年も開催します。実は、今回のde:codeは今までちょっと違うんですよ。とにかくDevOpsトラックがかなり衝撃的なんです。DevOpsの“超絶すごいゲスト”がたくさんやってきます。
CloudBeesから「Jenkins」の作者の川口耕介さん、HashiCorpのCEOであるMitchell Hashimotoさん、「Chef」のバイスプレジデントJames Caseyさん、そして、Mesosphere社さんにGitHubさん。まさにDevOps界の東西の横綱を集めたような勢いで、西海岸でもこんなメンバーが一同に会することなどないのでは?と思います。さらに、Rubyのまつもとゆきひろさんまで来てくださいます。
吉羽:DevOps界のすごい人を上から全員そろえた形ですね。彼らが好き放題話すというのにはわくわくします。
高添:MS的な課題は、そんな彼らにどう絡んでいけばいいかです。そもそも絡めるのかと。
吉羽:イベントの客層はエンタープライズ寄りになるでしょう。エンプラの世界の人にアナザーワールドを見せられるというか、そういう世界があることを認識してもらえれば成功ですよ。
牛尾:世界中どこでイベントやってもあっという間に満席になるような人たちが一堂に集まります。そんな人たちの話がまとめてライブで聞けるのですよ。MS的には負けそうですが、われわれも頑張っていきます。オープンソースとかAzureとかMSだとか関係なく、de:codeにきて是非DevOpsを楽しんで欲しいです。