平和のためのテクノロジを開発する人々は、戦争という事態に発展する前に暴力的な過激主義や紛争の芽を見つけ出し、鎮圧や対処のための行動をとるとともに、内戦によって荒廃した国家で辛酸をなめた当事者間に円滑な関係をもたらせるようになることを望んでいる。

平和基金会が発表した2015年の脆弱国家ランキングで、米国は安定しているものの、持続可能性が高いとまでは言えないという位置付けとなった。
提供:平和基金会
同カンファレンスでは、地理情報システムのベンダーであるEsriの創業者Jack Dangermond氏が、世界各地の出来事を人々に伝えるうえでの地図の力を称賛していた。またZipcarの共同創業者であるRobin Chase氏は、協調型消費と、参加型プラットフォーム、ピアツーピアのコラボレーションによって余剰資産を活用することが平和に向けた後押しとなる可能性を述べ、さらに米政府初の最高データ科学者であるDJ Patil氏は、刑事裁判制度の改革や、医療分野、教育分野におけるオープンデータの役割について語っていた。

米国科学技術政策局の最高データ科学者DJ Patil氏(左側)--PeaceTech Summit 2016にて
提供:Alex Howard/TechRepublic
壇上で語られる話や、聴衆からの質問を聞いていると、テクノロジを通じて平和を築き上げようとしている人たちが取り組んでいる難問に対する懐疑的な意見も耳に入ってきた。データと紛争回避に焦点を当てた討論を通じて、データ利用の制限や偏見の入ったデータによる問題が浮き彫りにされていた。これらはいずれも実用性という点で大きな問題を投げかけるものだ。
世界中のニュース報道を収集し、その論調などを数値化してデータベース化したうえで、全体を俯瞰するために情報を可視化するという「Global Database of Events, Language and Tone(GDELT)Project」では、その手法の性質上、検閲や、国家の統制下にある報道機関の存在、報道の自由を脅かすその他の制約により、報道されることのない情報はデータベース化されない。同様に、世界の殺人事件発生状況のデータを可視化しているHomicide Monitorが取り扱うデータは、主に国が発表したものだ。そこにギャップや制約がある点は、プロジェクトを遂行しているIgarapé Instituteも認めている。

GDELT Projectの「TimeMapper」システムを使えば、「GDELT Event Database」から検索基準に合致するイベントを抽出し、時系列での表示を可能にしたKMLファイル(「Google Earth」が使用する三次元地理空間情報ファイル)を得ることができる。
提供:The GDELT Project