最悪の事態にしない最善策--海外事例に見る事業継続の取り組み方 - (page 3)

岡出明紀 (ストレージクラフト テクノロジー)

2016-03-17 08:30

5つのアドバイス

 これらは、すべてeMazzantiが適切なIT-BCPを策定し、それを実践に移した上に、満足することなく対応を見直して次につなげたことによって生まれた最善の結果だと言える。Mazzantiはこれらの災害の経験を踏まえ、以下の5つを顧客にアドバイスしている。

  1. 事業継続のための“災害耐性”確保を事業戦略の一環として考えよ
  2. データのバックアップ/リカバリ対策を事業継続戦略の中核に据え、フェイルオーバー機能を定期的に検証せよ
  3. 発電機、消火器、燃料など災害時の必需品を会社に常備せよ
  4. 地域外の協力者を見つけ、協業の約束を取り付けよ
  5. 最高レベルのテクノロジパートナーやビジネスパートナーとのみ協業せよ

 1.については、IT-BCPを企業の事業戦略の一環として位置付けるには、経営者の理解と判断が必要となる。IT-BCPの策定に関して、経営者や意思決定者に「コストがかかる」と一蹴されてしまうような場合は、eMazzantiのように自社の災害耐性を売りにして、顧客の信頼をさらに厚いものにしたい、と説得を続けてほしい。

 2.に関しては、多くの企業がバックアップを取っただけで満足している節がある。バックアップを取っていても、そのデータを完全かつ迅速にリカバリできなければ全く意味がない。定期的にバックアップデータのフェイルオーバーが可能か確かめるべきである。

 3.に挙げられたものは最低限の備えであり、災害対策がオプションではなく、企業にとって必要不可欠なものになってきた今、多くの企業が実践していると思われるが、定期的に見直す必要がある。

 4.は、例えば、遠方にある自社の支店でもいい。また、信頼できるパートナーがいる場合は、緊急時に必要物資や応援人員を融通してもらうなどの約束を取り付けていると良いだろう。

 5.は言わずもがなであるが、それこそ2で挙げたようなことができないパートナーと組んだ場合、事業の継続を危うくすることもあるということを念頭に置いて、信頼できるベストなパートナーを選ぶべきである。

 ハリケーンは日本の台風、そして大寒波は近年首都圏を悩ませている積雪などに置き換えられ、ここに挙げたeMazzantiの事例は、十分日本でも通用可能な事例ではないだろうか。まだIT-BCPを策定されていない企業の方は、eMazzantiの対応を参考に体制整備を進めていただきたい。

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