このイニシアチブの何が新しいのか?
筆者が3月にThe Opportunity Projectの発表の場で見たものは、アプローチの転換を示しており、これには将来性がある。単にData.govにデータセットを公開して、人々にそれを使うよう促すのではなく、ホワイトハウスは30のテクノロジ企業および非営利団体と協力し、新しいツールのプロトタイプの開発や既存プラットフォームへの機能追加を行った。これには、Opportunity Projectのコミュニティーに参加するための「Slack」チャンネルや、データリテラシーを高めるための教育機関による取り組みなどがある。また、真に必要とされるものを構築するために、利用するユーザーの課題を想定したシナリオも用意されている。
こうしたツールは、米住宅都市開発省(United States Department of Housing and Urban Development:HUD)などが公開した新しいデータセットを利用している。HUDなどがツールやサービスを開発するための要素を米国勢調査局が提供している。データには米国勢調査局が実施する調査「American Community Survey」(ACS)のほか、労働市場や労働者関連、人種や民族と貧困地域、アフォーダビリティなど多岐にわたる調査から得られたデータが含まれる(「Longitudinal Employer-Household Dynamics」「Jobs Proximity Index」「Labor Market Index」「Low Poverty Index」「Racially/ethnically concentrated areas of poverty:R/ECAP」「Low Transportation Cost Index」「Location Affordability Index」など)。
米国勢調査局はオープンソースの「CitySDK」を公開しており、開発者が同局のデータを容易に利用できるようにしている。同キットの需要はかなり大きい。米国勢調査局が2012年にAPIを公開して以来、コール数は17億4398万9207件に達し、1万3204件のキーがプロビジョニングされて使用されている。
The Opportunity Projectに参加している米国の8都市(ボルチモア、デトロイト、ミズーリ州カンザスシティ、ニューオリンズ、ニューヨーク、フィラデルフィア、サンフランシスコ、ワシントンDC)は、データから着手して解決すべき問題を探すのではなく、手ごろな価格の住宅から教育、公衆衛生、交通機関まで、市内の住民が直面するさまざまな問題に注目し、さらにそれらの問題解決に寄与するツールの構築に必要なデータを探した。問題の所在について共通の情報を利用できるようにすることで、政策決定者と住民の立場がこれまでより対等になる。この考えに基づけば、やがて都市がデータを利用して、構造的人種差別や都市荒廃に対処するさまざまな政策の有効性を比較することも可能になるかもしれない。