ホワイトハウスの科学技術政策局(OSTP)内部でスペシャルアドバイザーを務めるAden van Noppen氏は、発表の場で講演を行い、このようなデータとツールを公開することで、ある種の「参加型開発」が可能になると意見を述べた。Noppen氏によると、そうした参加型開発は、一般市民がより直接的に問題の特定に関与して、政府の責任を問い、改善に向けて取り組むことができるものだという。
情報化時代に、データへのアクセス制限は、権力や特権と同じ意味を持つ。自らに関するデータ、そうしたデータにアクセスできる権限、そしてそれを理解して利用するリテラシーを持たないコミュニティーは、データの貧困に苦しむことになる。
The Opportunity Project発表の場でアーバンプランナーのSeema Diyer氏は、「21世紀の世界では、民主主義を正常に機能させるために、データへの平等なアクセスが極めて重要だ」と述べた。
真新しいアプリが狙いではない
「Opportunity.Census.gov」で利用可能な多くのデジタルツールは、人々の生活に変化をもたらす可能性がある。それらすべてのツールが目指しているのは、米国の都市に根強く残る政策立案者と政策の影響を受ける人々との間にある情報の非同時性を軽減することだ。その社会変革の理論(Theory of Change)の課題は、コミュニティーのメンバーがこれらの真新しいウェブサービスやアプリの存在を知るだけでは十分でなく、それらを便利だと感じる必要もあることだ。
「National Equity Atlas」は、Open Opportunity Dataを利用して開発されたツールで、公平な経済を構築するためのデータを提供する。National Equity Atlasは、都市内の不平等を示す地図を把握する人がほとんどいなくても、包括的な成長をもたらすだろうか。また、同じくOpen Opportunity Dataを利用する「DiversityDataKids.org」が示した機会の不平等は、そうしたコミュニティーに変化をもたらすだろうか。
National Equity Atlasを提供するPolicyLinkの「Equitable Growth Initiatives」(公平な成長イニシアチブ)担当ディレクターを務めるSarah Treuhaft氏は電子メールの中で、「われわれがNational Equity Atlasを開発したのは、ばらばらになった見つけにくいデータと視覚情報を都市や地域の政策変更に取り組むコミュニティーリーダーや運動家のために提供するユーザーフレンドリーなツールを作り出すためだ。これは『Zillow』や『Redfin』といったツールのユーザーベースと大きく異なるはるかに小規模な世界だ」と述べた。
PolicyLinkもUSC Program for Environmental and Regional Equity(PERE)のわれわれのパートナーも、そのようなコミュニティーリーダーに関連調査を提供し、政策変更を前に進めるために彼らと直接的に協力する仲介組織である。PolicyLinkには、コミュニティーベースの組織(CBO)や政策組織、政府のリーダー、慈善家、選出された公務員、民間雇用主など、地域で公平さと多様性受け入れの推進に取り組むコミュニティーリーダーたちの強力なネットワークがある。そうしたコミュニティーリーダーから、人口統計学的変化に関するデータや、人種/民族、収入、性別といった人口統計学的属性別の多様性受け入れ拡大を示すデータを求める声がわれわれに寄せられていた。そうした要望を受けて、National Equity Atlasは開発された。
人々がそのデータを使って、自分のコミュニティーの状況を理解し、戦略と政策を形作り、資金計画案に盛り込み、自分自身のネットワークを関与させ、自分たちの成長と繁栄にとっての、公平さとインクルージョンの重要性についてナラティブを共有して、より広範な連携を構築し、公平な解決策の支持基盤を強化していることをわれわれは確認している。
最近の市民アプリやオープンガバメントプラットフォームは、特にアプリの選択肢が多すぎて消費者が疲れてしまうという状況で、見つけやすさや実用性に大きな課題があるようだ。人々が既に利用しているプラットフォームやサービスにオープンガバメントデータを組み込むことが重要なのはそのためだ。
標準化された交通データを都市が公開すると、「Google Maps」は次の電車やバスが到着する時間、あるいは到着しないことをユーザーに知らせることができる。Yelpが病院の待ち時間や養護ホームの検査に関するデータを組み込んだら、消費者はより十分な情報を得た上で選択できるようになる。
成長するプラットフォームの中で存続する可能性が最も高いのは、テクノロジ企業が開発および運用し、オープンデータを使用する市民の機能だろう。例えば、不動産企業のZillowやRedfinなどだ。両社ともThe Opportunity Projectに参加している。