ITILとDevOpsは共存できるか?
Gareth Daine氏はこの疑問を掲げ、この2つの方法論が衝突するのか、それとも両立するのかを25人もの業界の専門家や観測筋に尋ねた。ITIL(Information Technology Infrastructure Library)は、ITを具体的なサービスとして組織に提供するための一連のベストプラクティスだ。一方DevOpsは、開発部門のアウトプットを、ソフトウェアを本番環境で運用するチームと連携させ、事業部門の必要に応じて継続的にリリースできるようにするための方法論だと言える。
提供:Joe McKendrick
共存できないとする意見には、1980年後半に取り組みがスタートしたITILは、2016年の組織に当てはめるには古すぎ、競争の激しい現在の市場に対応していくにはDevOpsの文化が必要だというものがある。用語も大きく変わっており、Daine氏が指摘しているように、「ITILのフレームワークに含まれているさまざまなプロセス全般で、計画の立案や文書化が重視されている一方、反復的開発やアジャイル開発、リーン開発の考え方やアプローチについてはほとんど触れられていない」のも事実だ。
しかし、Daine氏が記事の中で集めたさまざまな意見を追いかけてみると、確かにこの2つのアプローチの間には対立もあるものの、最悪の場合でもこの2つが互いに干渉することはないというのが一般的な共通認識だ。長期的に見ればこの2つは互いに必要とされるという意見も多かった(筆者も、この質問に対して意見を寄せた1人だ)。
Macanta ConsultingでディレクターおよびITサービス管理エキスパートを務めるKaren Ferris氏は、多くの人の意見を反映して、「私はITILとDevOpsは両立すると考えている」と述べている。「ITILではそもそも最初から、ITILは(組織に)『取り入れて適応させる』必要があるものだと述べられており、DevOpsの世界もその対象となる。使われている言葉は違うかもしれないが、目指している目標はどちらも同じで、事業部門が必要とする価値を提供することだ」(Ferris氏)
また、ITILとDevOpsは別の考え方から生まれたものだが、どちらもIT部門と事業部門の連携を取ることを目的としており、それこそが大切なことだと指摘する人もいた。HDIでサポート、サービス業界アナリスト、ライター、講師などを務めるRoy Atkinson氏は、「サービスマネジメントフレームワークであるITILは、アジャイルと同じではない」と述べている。同氏は「アジャイルソフトウェア開発宣言に立ち戻ってみると、『計画に従うことよりも変化への対応を重視する』などの一部の要素は、ITILの性格とはまったく相反するもののように見える」としながらも、「アジャイルの手法は、なにも反射的な行動や開拓時代の西部のような行動様式を支持しているわけではない。その目的は、反復と集中を通じて価値を生み出すことだ。素早いチェンジマネジメントに支えられた、整ったサービスマネジメントの手法は、アジャイル開発の目標の達成にも役立つ」と付け加えている
Purple GriffonのITILエキスパート兼トレーナーであるSteve Whelan氏は、DevOpsはITILの考え方を拡張したものだと感じている。「プロセスに関する限り、DevOpsは実際にはITILの部分集合であり、DevOpsが目指しているものは、すべてにITILのプロセスに当てはめることができる。基本的に、DevOpsにあってITILにないものはない。基本的に、DevOpsはどちらかといえば方法論に関するものであり、ITILはどちらかといえば目標に関するものだという違いがあるだけだ」(Griffon氏)