では具体的には、どのような方針でソフトウェアの開発力を高めようとしているのか。久次氏によると、「コラボレーション力の強化」だという。
「社内、グループ企業内だけでなく、外注先の企業も含めたコラボレーション強化を重視している企業が多いですね。もちろん、ソフトウェア開発に携わる部門、企業だけでなく、ハードウェア開発も含めたすべての関係者で情報を共有し活用しようということです」
不具合を防止するコラボレーション
では、製品の市場投入後にソフトウェアの不具合を発生させないようにするには、どのようなコラボレーションが必要になるのだろう。久次氏は「ライフサイクルごとの製品構成を管理を容易にすること」と話す。
「製品開発では、設計、計画、製造、保守という製品のライフサイクルごとに、変更が発生し、製品構成が変化していきます。最終的な製品構成だけが示されているだけで、過去の変更の過程が、工程ごとに分かりやすい形で示されないと、不具合が発生した場合の原因を解明できません」
ハードウェアの変更によって、ソフトウェアもその変更に合わせて修正する必要が出てくることがある。変更は細かなものを含めれば数多く発生するケースがあり、その都度、ハードとソフトの開発チームが情報を共有し、次のステップに進めるかどうかを判断しなくてはならない。万が一、作業の抜け落ちが発覚すれば、すぐに適切なプロセスまで立ち戻れないと、コストと時間が無駄に消費されることになる。
自動車や航空機だけでなく、家電製品などでも、今後、製品に搭載されたソフトウェアをアップデートし、より使い勝手を良くしたり、機能低下を補うというサービスが広がってくる。その場合、既に市場で出回っている製品に対しても、ライフサイクル管理を適切に実行する必要が出てくる。また、これからはユーザーごとに制御内容が変わってくる可能性がある。こうした情報をどこまで管理できるかも課題となってくるはずだ。
反証する基盤づくりも重要
久次氏は、変更履歴の管理は万が一の際のリスク管理にも役立つと話す。
「今後、ソフトウェアが原因で不都合が起きたと訴訟を起こされるケースが増える可能性があります。明らかに訴えが正しい場合は別ですが、反証する必要が出てくることもあるでしょう。そうした場合、開発の過程をしっかり把握しておくと、適切な対応が可能になります。また、ソフトウェアに問題があった場合でも、どこが原因だったのかを明確にできるかできないかで、企業に対するイメージはまったく違ってきます」