山積する課題
では、IT企業はどんな役割を果たすのだろう。GEのような優秀なIT技術者を抱える企業は一部にしかすぎない。多くのIT企業は、ユーザー企業のITスキルを補う形でIT技術者を送り込み、一緒にシステム化を考える。「それが普通になり、ユーザーとの深い関係が作られる」。求められるのはシステムをどう設計し、どんな部品を組み合わせるか、といったデザインパターンを考えるIT技術者などだという。業務に精通するIT技術者がユーザーの要件を明確にするのが前提になる。
課題解決も迫られる。1つは、IT企業の競争がグローバル化していること。開発は中国でもインドでも構わないので、技術力やコスト競争力を持ち続けなければIT企業は淘汰される。2つ目は、システム構築やソフトウェアの料金の妥当性を説明すること。3つ目は、ソフトの品質や堅牢に対する規制がないこと。ITシステムは、IT企業の良識に基づいて開発されており、「いいものを作ることを、どこまで追求するかによって、品質にばらつきが生まれる」(室脇理事)。
組み合わせた部品の品質を、誰が保証するのかという新たな問題が表面化するだろう。システムダウンによる影響は拡大する一方だし、自動運転など人命にかかわるソフトもある。「責任を問われる開発は請け負わない。部品も開発しない」とのIT企業の声が聞こえてくる。だが、国内の開発やテスト作業が大きく減少する中で、室脇理事が予想するようなオブジェクト指向時代を生き残れるIT企業は何社あるのだろう。

- 田中 克己
- IT産業ジャーナリスト
- 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。