展望2020年のIT企業

再編・淘汰を促すオブジェクト指向の到来 - (page 2)

田中克己

2016-03-30 07:30

山積する課題

 では、IT企業はどんな役割を果たすのだろう。GEのような優秀なIT技術者を抱える企業は一部にしかすぎない。多くのIT企業は、ユーザー企業のITスキルを補う形でIT技術者を送り込み、一緒にシステム化を考える。「それが普通になり、ユーザーとの深い関係が作られる」。求められるのはシステムをどう設計し、どんな部品を組み合わせるか、といったデザインパターンを考えるIT技術者などだという。業務に精通するIT技術者がユーザーの要件を明確にするのが前提になる。

 課題解決も迫られる。1つは、IT企業の競争がグローバル化していること。開発は中国でもインドでも構わないので、技術力やコスト競争力を持ち続けなければIT企業は淘汰される。2つ目は、システム構築やソフトウェアの料金の妥当性を説明すること。3つ目は、ソフトの品質や堅牢に対する規制がないこと。ITシステムは、IT企業の良識に基づいて開発されており、「いいものを作ることを、どこまで追求するかによって、品質にばらつきが生まれる」(室脇理事)。

 組み合わせた部品の品質を、誰が保証するのかという新たな問題が表面化するだろう。システムダウンによる影響は拡大する一方だし、自動運転など人命にかかわるソフトもある。「責任を問われる開発は請け負わない。部品も開発しない」とのIT企業の声が聞こえてくる。だが、国内の開発やテスト作業が大きく減少する中で、室脇理事が予想するようなオブジェクト指向時代を生き残れるIT企業は何社あるのだろう。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]