「報告はテレビ会議で聞いた方が効率がいい」--テレワークを実践する総務省 - (page 2)

山田竜司 (編集部)

2016-04-06 07:00

 一方、冒頭紹介したように、テレワークを実施企業はまだまだ多いとは言えない。テレワークに詳しいNTTデータ経営研究所の大林勇人氏は「まだまだ面と向かって会議をしなくてはならないと考えている経営者が多い」と指摘する。「クリエイティビティが要求されるワークショップや機密情報を扱う打ち合わせといった、顔を合わせて実施する階段と報告会議を同じように考えている企業が多い。テレワークを実施したほうが効率が上がる会議がある点を戦略的に考えるべき」(大林氏)


NTTデータ経営研究所 大林勇人氏

 さらに大林氏は、数字の面には反映されていないがテレワークにすでに取り組んでいる人もいるのでは、と疑問を投げかけた。例えば、スマートフォンを利用している人が仕事のメールを読んでも“テレワーク”をしていることにならないと考えるひとが多いのではという問いだ。これらは実際にはテレワークそのものである。外資系企業やグローバル企業では他国拠点との距離の問題や、女性の正社員の割合も見ても、テレワークの導入が当たり前になりつつあるという。


テレビ会議システムやモバイルノートPCは普及が進む

 確かに、ここ数年でネットワークは太く低コストになり、低価格で軽量なモバイルワークに向いたPCやスマートフォン、安価なウェブ会議やテレビ会議システムも普及が進んでいる。テレワークが可能な環境が整いつつあるのも事実だ。

 総務省でも週に一度程度、家から仕事をする職員が増えているほか、電子決裁により、稟議の際「印鑑」の必要が一部なくなるといった、ワークスタイルの変革が進んでいる。先日も高市早苗大臣がウェブ会議で地方と交流するなど、総務省自体でテレワークを推進していることが分かる。

 総務省の橋本氏は「テレワーク導入がうまくいっている企業は未就学児を養っている従業員にはテレワーク利用を許すといった限定的な使い方ではなく、従業員全体を対象にすると不公平感がなく評価しやすくなる」と成功事例を紹介。実際にテレワークを導入した企業の半数以上で生産性や業務効率の向上を実現していると指摘した。


テレワークの導入により実現した効果、実現を期待する効果 (出典)総務省「地方創生と企業におけるICT利活用に関する調査研究」(平成27年)

 大林氏は「60歳以上の経営者だとなかなか女性が未就学児を育てながら働くといった状況を理解できないケースが多い。価値観や意識が違う経営者の割合が増えれば一気に状況が変わる可能性がある」と説明した。

 政府が目標としている「2020年までにテレワーク導入企業を2012年比の3倍程度(3割以上程度の企業がテレワークを導入)」という数値と現状にはまだ隔たりがある。一方、話題になった保育園の不足や労働人口の減少を鑑みると、優秀な従業員を確保するために自由なワークスタイルを認めざるを得ない。従業員側のテレワークへのニーズは高いことがうかがえ、経営者は競争力を維持するためにワークスタイルの見直しを迫られると考えられる。

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