日本株展望

東北復興の現場を見て考えたこと

ZDNet Japan Staff 2016年03月25日 11時16分

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 3月24日の日経平均は前日比108円安の1万6892円だった。日経平均はしばらく1万7000円近辺で推移すると見られている。

 今回は、前回の記事(建設・土木株の投資判断)の続編をお届けする。楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏は3月21日週、東北復興の工事現場を見るために、宮城県気仙沼市と岩手県陸前高田市を訪問したという。そこで窪田氏が感じたことをお伝えする。

東北復興を完結するまで、まだ長い年月を要する見込み

 阪神淡路大震災(1995年1月)の後の神戸の復興は迅速だったと言えるだろう。土地の再配分など難しい問題はあったが、多くの問題を乗り越え、地震に強い新市街地を再生することができた。

 それと比べると、東日本大震災(2011年3月11日)からの復興には長い時間がかかっているが、まだゴールが見えない。既に5年が経過したが、いまだに仮設住宅での生活を余儀なくさせられている方々がたくさんいる。地元には「10年たっても復興は完結しないだろう」と悲観的な声もある。

 阪神淡路大震災の被害は、ほとんど地震と火災によるものだったので、地震に強い市街地を再生するという基本方針がすぐ決まった。日本の耐震建築技術は高い水準にあり、基本方針に沿って粛々と復興が進められた。

 一方、東日本大震災は被害の大部分が津波によるもので、復興の基本方針をなかなか決められないことに問題がある。防潮堤、カサ上げ(山を削って取った土で低地の地盤を高くする)、住宅の高台移転などの対策が検討されて実行されているが、住民の意向にあわないものが多く、進捗(しんちょく)が遅れている。

 気仙沼市と陸前高田市で聞いたことを以下に記載する。

国主導の防潮堤整備計画に、住民の間では賛否が分かれる

 東北電力の女川原発では、大型津波を想定して海抜14.8mまで敷地の位置を高めていた。そのため東日本大震災の直後に13mの津波【注1】に襲われても、臨界事故を防ぐことができた。

 【注1】女川では地震の直後に約1mの地盤沈下が起こった。そこに最高13mの津波が来た。14mの津波が来たのと同じ結果となった。

 一方、東京電力の福島原発では、10mの防潮堤しか築いていなかったので、津波による原発事故を防げなかった。

 こうした事態を踏まえ、国主導の復興ではまず、岩手、宮城、福島県の海岸に総延長370kmの防潮堤を築く計画が作られた。ただし、それだけ長い距離に高さ15mの巨大な防潮堤を築くのには、コストがかかり過ぎる上に海岸の環境や利用に及ぼす影響が大きくなることから、高さは10m内外とし、危険度に応じて高さを調整することになった【注2】。

 【注2】国は、数百年に1度と言われる東日本大震災規模の津波をレベル2と定義し、それより大きさの小さい津波で、数十年から百数十年に1度発生すると考えられるものをレベル1と定義した。レベル2の津波を防潮堤だけで防ぐのは現実的ではないとして、レベル1の津波を防げる高さに設定したわけだ。ちなみに女川原発は、高さ14mの敷地に15mの防潮堤を築き、防潮堤を海抜29mの高さまで引き上げる計画としている。

 ところが、地元住民の間では、この防潮堤計画が不評だ。震災直後は反対が少なかったが、時間がたつにつれて反対意見が増えてきた。景観が損なわれる、観光業や漁業にダメージがある、海を基盤とした生活が成り立たなくなるなど、さまざまな意見が寄せられている。

 地域ごとに住民の意見を聞きながら防潮堤の整備を進めているので、整備は遅れが目立ち、2020年までに総延長370kmを整備する予定だが、現時点でまだ2割程度しか完成していない。

 気仙沼市は、漁業および観光業が重要な産業となっているので、防潮堤への反対が根強く、地域別に住民に説明会を開いて承認を得るのに時間がかかっている。気仙沼市唐桑町に建設中の防潮堤は、当初10m程度の高さにする予定だったが、住民の反対により7.7mに高さが変更されている。防潮堤に一定間隔で、海岸が見えるように強化ガラス窓をつけるなど、地元の声に配慮している。

 陸前高田市には、鹿島(1812)を中心とする共同企業体(Joint Venture:JV)が、高さ3mの防潮堤(第1線堤)と、高さ12.5mの防潮堤(第2線堤)を約2kmにわたって建設している。ここはもともと7万本もの松林と美しい砂浜が広がる海水浴場だった。第1線堤と第2線堤の間に、かつて存在した松原を再生する計画としている。ここでも住民の反対はあるが、工事は進められている。

 陸前高田市には、7万本の松原が壊滅する中で、たった1本だけ奇跡的に残った「奇跡の一本松」があり、全国的に有名になった。奇跡の一本松は、その後、遺憾ながら枯死が確認されたが、人工的な保存作業が施され、いまも現地に残っている。

 保存技術は精緻で、いまでも下から見上げると、青々とした松葉をつけた松の巨木に見える。観光資源として、高い価値を持つようになっている。

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