日本株展望

東北復興の現場を見て考えたこと - (page 2)

ZDNet Japan Staff 2016年03月25日 11時16分

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住宅の高台移転も計画通りには進んでいない

 仮設住宅での生活が続く人が今でも多いのは、経済的な問題に加え、元住んでいた場所に住居を再建する許可が下りないことも一因だ。津波の被害が大きかった地域では、防潮堤が完成するまで本格的な街作りは開始できなくなっている。防潮堤の建築の遅れが街の再生の遅れにつながっている。

 いま建築許可が出るのは、オフィス、工場、店舗などの商業施設が中心だ。住居の建築許可は下りない。気仙沼と陸前高田の被災地域では、3階建ての堅固な造りのビルがポツポツと建ち始めている。ただ、被災して使えなくなったビルで撤去することもできずに残っているものも混在しており、5年たっても復興は緒に付いたばかりの印象だ。

 復興計画では、住居は高台に移転する方針だ。防潮堤が完成しても、レベル2クラスの巨大津波は防げないので、原則、低地に住居は作らない方針だ。津波被害の大きかった地域(沿岸部および川の周辺:川を伝って津波が奥地まで入るため)には、住宅の建築許可は出ない見込みだ。

 高台に住居用の敷地の整備が進んでいる。ところが、高台へ移転する人もまだ少ないのが現状だ。元住んでいた場所に戻りたいという気持ちが強いこともあるが、それだけではない。建設労働者の人手不足が深刻で、建築コストがどんどん上昇していることも、住居建設が進まない理由だ。補助金を受けても、住宅を新築するのは困難な状況だ。高台移転は、警察署や役所など、公共部門がまず率先して実施している状況だった。

災害公営住宅は入居率が高まりにくい

 気仙沼および陸前高田市では、震災で住居を失った人のために、災害公営住宅(市営マンション)の建設が進んでいる。被災者であれば、民間の同等の賃貸マンションよりも低い家賃で入居することができる。

 ただ、災害公営住宅が完成して仮設住宅に住んでいる人に移転を呼びかけても、入居率が高くならない問題がある。賃料の設定方法が原因という声もある。収入によって家賃が異なり、低所得者は安い賃料で入居できるが、一定の収入がある人には、民間の同等のマンション並みの家賃が課せられる。低所得者の入居は進んでも、一定の収入のある人は災害公営住宅への入居を敬遠する問題が起こっている。

JR大船渡線(気仙沼~陸前高田~大船渡)の復旧は断念

 岩手、宮城、福島の海岸線を走るJR線は、津波で被災し、広域にわたって線路が消滅した。もともと、不採算だった路線が多く、今でも復旧のメドがたっていないところがたくさんある。

 岩手県の三陸鉄道(北リアス線(久慈~宮古)、南リアス線(釜石~盛)は、全線復旧した後、NHKの朝ドラ「あまちゃん」ブームの恩恵で観光客が増えて何とか黒字化し、話題になった。ブームが一時で終わらず、黒字を定着させられるかが鍵だ。

 JR大船渡線(気仙沼~大船渡間)は、鉄道復旧を目指して努力してきたが断念し、JR東日本が運営する「BRT」(Bus Rapid Transit)【注3】というバス輸送によって代替されることになった。

 【注3】JR東日本が運営するバス高速輸送システム。これまで鉄道が通っていた場所にバス専用線を作り、渋滞などによる遅延なくスムーズな運行を可能にすることを目指す。これまでJR駅として使っていた場所をそのままBRTの発着駅とするほか、地域住民の利便性を考えて、停留所を増やすことも自在。

 JR気仙沼駅では、鉄道とBRTが同じホームに乗り入れ。将来、完全なバス専用線を完成させる予定だが、現時点で気仙沼~大船渡間を走るBRTは、専用線だけでなく一般道も使って運行している。

 将来、バス専用線が完成すれば、BRTは鉄道と同様、発着時刻の正確性を確保できる予定だ。ただし、現時点では一般道も使いながらの運行だ。地元の声では、いまは遅れることがあり、通勤通学に使う人は苦労しているとのことだ。

 陸前高田市ではこれまで、鉄道復旧を目指して、土木工事を行ってきた。鉄道が通る予定のルートに盛り土をして準備していたが、そこに鉄道は通さないことになった。盛り土の上に鉄道を走らせることで、第2の防潮堤【注4】の役割を果たすことも当初は期待されていた。

 【注4】東日本大震災クラスの大規模津波が来ると、陸前高田に建設中の12.5mの防潮堤も超える可能性がある。その際、鉄道の盛り土が第2の防潮堤となって津波を止めることが検討されたこともあった。鉄道を断念してBRTを完成させることになったため、この盛り土をどう活用するかも考えていくことになる。

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