本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、アカマイ・テクノロジーズの徳永信二 職務執行者社長と、富士通研究所の沢崎直之 プロジェクトディレクターの発言を紹介する。
「大規模なサイバー攻撃に対応したクラウド型セキュリティサービスが求められている」 (アカマイ・テクノロジーズ 徳永信二 職務執行者社長)
アカマイ・テクノロジーズの徳永信二 職務執行者社長
アカマイ・テクノロジーズが先ごろ、セキュリティソリューション戦略について記者説明会を開いた。徳永氏の冒頭の発言は、その会見で、同社が展開している大規模なサイバー攻撃に対応したクラウド型セキュリティサービスの需要が、ここにきて高まってきていることを述べたものである。
同社の親会社である米Akamai Technologiesは、世界110カ国に展開する20万台以上のサーバ群によって構成される独自の分散型コンテンツ配信ネットワーク「Akamai Intelligent Platform」を通じて、オンライン上のコンテンツやアプリケーションの配信を高速に行うサービスを提供。現在、5000社を超える顧客ベースを持つ。
同社の2015年のグローバル売上高は前年比12%増の22億ドル。事業内容は、コンテンツを配信する「メディアデリバリー」をはじめ、アプリケーションを高速化する「クラウドネットワーキング」、ウェブサイトのパフォーマンスを向上させる「ウェブパフォーマンス」、そしてクラウド型セキュリティサービスを提供する「クラウドセキュリティ」の4分野からなる。
徳永氏はクラウド型セキュリティサービスの需要が高まっている要因について、ここ1年余りの間に日本でも大規模なDDoSおよびウェブ攻撃が急増したことや、電子商取引におけるビジネスリスクを低減させたいという企業ニーズが高まってきたことなどを挙げた。そのうえで「アカマイはコンテンツ配信を担う分散ネットワークを活用して、大規模なDDoSおよびウェブ攻撃に対応したクラウド型セキュリティサービスを提供している唯一のベンダーだ」と強調した。
今回、そのクラウド型セキュリティサービスの拡充に向け、新たにボットを管理する「Akamai Bot Manager」を国内で提供開始することも発表した。ちなみにボットとは、人間に代わって処理を自動実行するプログラムの総称である。
徳永氏によると、「当社の分析では、企業におけるウェブトラフィックの60%超はボットによって生成されている可能性がある」という。そうした状況ながらも従来のボット対応サービスでは、自動化されたウェブトラフィックの検出あるいはブロックのみのものが大半だった。
これに対し、Akamai Bot Managerではウェブサイトを攻撃しているボットのタイプを効率的に識別して把握できるようになるとしている。