米ZDNet編集長Larryの独り言

グーグルのクラウドはいかにエンタープライズを魅了する?--GCP NEXTで見えた優位性 - (page 2)

Larry Dignan (ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2016-03-30 06:15

受け入れて拡大する

 この受け入れて拡大するというのは、1990年代にMicrosoftが「Windows」と「Internet Explorer」の一体化の際に採用し、その後にも他の製品で採用し続けている戦略だ。Google Cloud Platformの場合は、同社のクラウドサービスとAWSのクラウドサービスの双方を管理する監視ツールであるStackdriverを用いてこの戦略を実行しようとしている。

 また同社は、Google Cloud PlatformとAWSで顧客を分け合おうとしているのも明白だ。エンタープライズ分野での成功が話題となっているが、Googleのパートナー企業となったDisneyCoca ColaはAWSの顧客でもあるという点には注目すべきだ。それぞれ詳細な事例が紹介されている。Spotifyもそうした指標となる顧客の1社で、今後もAWSでインフラの一部を運用する意向だ。

 Googleは顧客を分け合うことに関しては言及しなかったが、AWSの顧客ベースを足場にして、売上の向上につなげたいと考えているのは明らかだ。Google Cloud Platformは、AWSを抱きしめるフレネミー(友を装った敵)だと考えればよいだろう。

 しかし本当に興味深い点は、Googleが「Microsoft Azure」や、相互の連携について一切言及しなかったところにある。Azureはクラウド競争において第2位につけているものの、Googleは先頭を走っているAWSに的を絞っている。これは第3位が首位を見据えながら、2位を一気に追い抜かそうとする複合的なマーケティングキャンペーンを思い起こさせる。

オープンが勝利を収める

 オープンさに勝るベンダーが、より大きな勢いを持つという点に議論の余地はないだろう。Red Hatは日々、そのことを証明している。しかし、オープンソース分野には数多くのベンダーがひしめき合っているため、何が優位性をもたらすのかは分からない。ほとんどのベンダーは、マーケティングの売り文句として何らかのかたちでオープンさを前面に押し出しているのだ。

 Googleは、同社のクラウドスタック全体を通じてオープンさを貫くことに賭けているが、本当の優位性は機械学習とビッグデータになるだろう。同カンファレンスでも、こうした点に光が当てられていた。

Google’s Data Research

ガラスの1枚板

 Googleの幹部らは、Stackdriverがクラウドインフラを管理するための「ガラスの1枚板」だと表現した。この表現は、VMwareの最高経営責任者(CEO)を務めた経験もあるGreene氏がGoogleのクラウド部門の舵を取っていることを考えると驚くべきものではない。あらゆるベンダーは、企業向けテクノロジのどの分野をターゲットとしているかにかかわらず、他のインフラを管理するためのガラスの1枚板を持っている。Cisco Systemsはネットワークとハイブリッドクラウドでこのアプローチを推進している。VMwareは言わずもがなだ。

 あるデモは、StackdriverがGoogleとAWSの双方のクラウドを管理するという点を強調していた。そのデモでは、ユーザーの90%がAWSを採用したものの、満足できずにワークロードをGoogleに移行するという経緯が描き出されていた。こっけいであるが、Googleのマスタープランを如実に物語っている。AWSを管理できる上位層を提供することで、Googleはユーザーを自社クラウドに引き込もうと考えているのだ。

Stackdriver

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