工場と言えば、その典型的なイメージは、煙突から煙を吐き、炉で高温の炎が燃えるといったもので、「知的さ」や「柔軟性」といったイメージで語られることはなかった。しかし、国際的な巨大企業であるGeneral Electric(GE)は、その煙を吐き出す建物のイメージを大きく変え、製造業を新時代に導こうとしている。あるいは、これは革命と言ってもいいかもしれない。
2015年、GEはインドのマハーラーシュトラ州チャカンに2億ドルを投じて建設した初の「マルチモードな」施設を披露した。同社はこの施設が、製造業の変化の先駆けになると考えている。この工場は、インドのNarendra Modi首相によって誘致されたもの。同国は何億人ものスキルを持たない若者に仕事を与えるという、困難な課題に直面している。この工場で雇用されるのは1500人の技術者とエンジニアだけで、深刻な雇用問題を解決できるわけではないが、そもそも、これを直接的に解決することを目指しているわけではない。その代わりに、この工場はインド内外に大きなプラスの波及効果を生み、雇用やサプライチェーンに影響を与え、従来とは劇的に異なる、設計や産業の新たなイノベーションの発展を促進すると期待されている。
チャカン工場を見れば、その計画が進んでいることは明らかだ。真新しい最先端の工場フロアでは、蒸気タービンや水処理ユニット、ジェットエンジンのパーツなどが所狭しと製造されている。
このマルチモード施設の責任者であるGEのAmit Kumar氏は、「基本的な考え方は、多くの企業に製品を提供するということだ。石油およびガス、航空、運輸、分散電源など、さまざまな分野の製品を1つの工場で製造する」と述べている。
これは、GEにとっていくつかの理由で大きな変化となる可能性がある。まず、各事業ごとに専用の工場を建設せずに済むことで、多額のコストを削減できる。同社の幹部によれば、その効果は最大10倍に及ぶ。また、技術者は幅広い分野のさまざまな製品を扱うことになるため、業界や業務を横断するスキルを急速に身につけ、仕事の価値と個人のスキルセットを急速に向上させることになる。
また、このマルチモード施設から得られる重要な利点がもう1つある。それは規模の経済だ。Kumar氏によれば、GEが契約を結んでいる小規模サプライヤーの多くは、このような大工場の需要に応じるのに苦労している。このため、地元サプライヤーの操業規模が大きくなるまでの間、工場自体が特定の製品の萌芽的な需要への対応を支援するという。それでも、これらの説明はどれも、チャカン工場がこれほど独特で、GEのサプライチェーンの気まぐれなニーズに合わせられる柔軟性を持っている理由としては十分ではない。チャカン工場が新たな製造業の夜明けを目指してGEが放つ矢だとすれば、これらのことを可能にするその矢尻は3Dプリンティングだ。
米ニューヨーク州スケネクダディにある同社の付加製造研究所でマネージャーを務めるPrabhjot Singh氏は、「GEでは、3Dプリンティングは新しいものではない。この技術は出回り始めてから数十年経っており、通常は摩耗したり壊れたりした、コンプレッサのブレードやレーザークラッディング技術を使ったギアなどの価値の高い工業部品を修理するために使われてきた」と述べている。
3Dプリンティングは既存の材料やパーツの上に、同じ材料をプリントすることができ、異なる材料さえ使うことができる。しかしGEはこの2年間で、この技術を修理のための技術から、工業デザインを進化させる技術へと進化させた。この部門の取り組みが生んだ輝かしい成果が、ある燃料ノズルだ。