インターネットに接続された色々なコンピュータの画面を見られる、魔法の鏡を渡されたと想像してほしい。これで、建物のエアコン制御パネルや、薬剤師の在庫情報画面、Windowsプログラマーのコンソール画面、それに学校の管理者の電子メール受信箱や、タッチスクリーン式のトイレ顧客満足度モニタまで、さまざまな画面を見ることができる(残念ながらこれは冗談ではない)。
時間さえあれば、もっと恐ろしいものも見ることができる。例えば、小児科医院の受付にあるデスクトップに 患者の名前、住所、生年月日、両親の電話番号が表示されている画面だ。
これは「開かれた」インターネットの1つの姿だが、ユーザーは決して覗かれる側になりたいとは思わないはずだ。
こういうことは実際にあり得るというだけでなく、現実に起こっている。インターネットに接続されている無作為に選ばれたデスクトップから、何千枚ものスクリーンショットが収集され、「VNC Roulette」と呼ばれるサイトにアップロードされているのだ(編集部注:本稿掲載時点では閲覧できない状態になっている)。
これらのデスクトップには共通点がある。ユーザーがどこからでもデスクトップにアクセスし、操作できるようにするためのオープンソースソフトウェア「VNC」を使用しているということだ。ところが、VNCにパスワードが設定されていない場合、インターネットをスキャンするだけで、安全でないコンピュータを誰でも発見できてしまう。

Shodan.ioに表示された、脆弱性のあるVNCサーバの位置を示した地図。
あるハッカーは、安全でないコンピュータがいくつあるかを調べてみようと試みた。その結果、このRevolverと名乗るモロッコ在住のグレイハットハッカーは、想像以上のものを手に入れてしまった。
同氏は3月28日付のメッセージで、「システム管理者のメールボックスにも、機密データがある重要なシステムにもアクセスできた。セキュリティなんてまったくなかった」と述べている。
Revolver氏は、自分で運用しているサーバから、IPアドレスと特定のポートの組み合わせに順番にアクセスし、安全でないサーバが見つかった場合、ウェブベースのVNCビューワで接続を試みるスクリプトを作成した。このスクリプトは、認証なしで利用できるサーバを発見すると、接続してスクリーンショットを入手し、接続できない場合はセッションを切断して別のIPアドレスを試すという動作を繰り返す。
同氏はこれまでに数千回接続に成功し、現在は23Gバイト相当のスクリーンショットを手元に持っている。ただし、そのすべてがVNC Rouletteに掲載されているわけではない。同氏は「トラブルを避けるため」に、一部は取り下げたという。
Revolver氏は、数千枚のデスクトップのスクリーンショット(Windows、Mac、あるいはLinux)の他に、非常に機密性が高い情報が含まれている可能性がある、数百枚のSCADAシステムのスクリーンショットが含まれていることに気づいた。SCADAは一般に、産業施設で監視制御に使用されている。
同氏は、これほど多くのデスクトップへのアクセスが可能になったのは、「設定の問題」でも、セキュリティホールの問題でも、VNCの設計に存在する脆弱性の問題でもないと述べている。これは、ユーザーが基本的なセキュリティ設定を完全に無視した結果だ。
「VNCサーバをインストールすると、大きな文字でセキュリティのためにパスワードを設定すべきだと説明するメッセージが表示される。そして、(多くの人は)そのパスワードを設定していない」と同氏は述べている。