なぜなら、組込型を利用すると、一般消費者向けのデータプランを回避できるだけでなく、メーカーが車の性能に関する情報を取得し、無線経由でアップデートすることでリコールの必要性を削減できるためである。個人、公共機関、企業が所有している自動車向けのIoTアプリケーションの数が増えると、システムのクリティカルな機能は飛躍的に複雑さを増すことになる。
2014年にGartnerが発表した調査によれば、設置済みのIoTデバイスの合計台数が2020年には250億台に達すると予測されている(表を参照)。また、この調査によれば、自動車分野における設置済みのIoTデバイスの台数の年成長率は、2015年に96%という最も高い数字を示している。
2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | |
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自動車向け | 96.0 | 189.6 | 372.3 | 3511.1 |
消費者向け | 1842.1 | 2244.5 | 2874.9 | 13172.5 |
汎用ビジネス向け | 395.2 | 479.4 | 623.9 | 5158.6 |
垂直ビジネス向け | 698.7 | 836.5 | 1009.4 | 3164.4 |
合計 | 3032.0 | 3750.0 | 4880.6 | 25006.6 |
自動車分野と輸送分野でのIoTアプリケーションは、全体として非常に多くの数がある。
例えば、IoT向けアプリケーション開発プラットフォームである「ThingWorx」は、使いやすくセキュアなIoTデバイスのクラウド接続、開発、試運転、管理を提供するために特化されたものであり、IoTが可能にする数多くの機能に対応している。これには、緊急サービス、自動車のリモート診断、車両の追跡と回収、安全運転サービスや運転中のスマートフォン禁止サービス、10代のドライバーを管理するサービスなどが含まれている。
これらの技術を駆使することで、保険会社が自動車のテレマティクスデータを使用して、顧客の運転パターンを分析し、安全運転の実施を推奨できるようになるほか、優良なドライバーには報酬として保険料を引き下げることも可能となる。
センサや高精度測位、ドライバー監視と組み合わせたオンボード診断(OBD-II)データの収集、そして送信も運行管理者にとって非常に重要となる。運行管理者は、トラック車両やドライバーの状況を追跡することで、当該車両が故障する前にメンテナンスを受けていることを確認できる。運行管理者は、ドライバーが警告を受けたかどうか、安全運転を行っているかどうかまで確認することが可能だ。
このような監視は、作家George Orwellが書いた小説『1984年』に登場する「ビッグブラザー(独裁者による徹底的な監視社会)」の印象を与えるかもしれないが、非常に競争の激しい環境に置かれている運行管理者にとってはビジネスを継続できるかどうかの分かれ目となる。また、このような監視に加えて、燃料の節約、通行料自動支払いによる時間の短縮、故障件数の削減などを実施することで全体的なビジネスコストをさらに削減できるだろう。
また、このような監視は、自動運転システムの実現に向けて準備を整えるものでもある。自動運転システムは、Google、Audi、Apple、BMW、Blackberry、Ford、その他多くの企業で実用化の兆しが見えてきている。
これらの企業はお互いに活発に交流しており、現在では、自動車メーカーと、かつて一般消費者向けのソフトウェア開発会社であった企業とを区別できないレベルまで到達している。将来どの陣営が優勢を勝ち取るかが、今後の見ものとなるだろう。
BI Intelligenceは、自動駐車機能のような運転補助サービスを強化するためにIoTが利用されることを指摘している。しかし、これはV2Xという名の巨大な氷山の一角にすぎない。
Deloitte Consultingのチームが2015年に発行したレポートには、コネクテッドカーの開発の歴史における各種の段階が示されている。
これによると、コネクテッドカーの開発は、General Motors(GM)の「DAIR」や「OnStar」による第0~1段階に始まって、Fordの「SYNC」、Kiaの「UVO」、GMの「MyLink」による第2段階を経た後、現在、V2Xによる第3段階へ到達しており、次なる第4段階はTesla Motorsの「Autopilot」と自動運転の時代であると予測されている。
インフォテインメントの追加が中心であった時代はすでに全盛期を過ぎ、今やV2Xの時代へと突入している。V2Xは、ユビキタス型のセンサを高精度測位やセルラー、近距離無線(SHO)通信と組み合わせることにより、これまでにない「自動車による認知」の時代を先導するだろう。