V2Xと自動運転を実現するための各種テクノロジ
V2Xで必要となるテクノロジの多くはすでに存在しているか、または急速に現れつつある。しかし、自動車の設計サイクルは、それらのテクノロジが数年では使い物にならないであろうことを意味している。
すなわち、コンセプトから大量生産まで3~4年かかる自動車の設計サイクルを18カ月以内で大量生産にたどり着く一般消費者向け家電の設計サイクルと混同してはならない。
自動車の設計サイクルが長期にわたる理由は、正常に機能しない機器に関連する危険性、重大な法的義務の原因となる可能性を鑑みたうえでのことだ。自動車用機能安全の国際規格である「ISO 26262」などに対するコンプライアンスを維持することは、自動車機器の機能面の安全性を保障するためには役立つが、コンプライアンスの維持にはかなりの時間と費用がかかる。これと同じことが、グローバルな規制要件を備えた無線接続にも当てはまるだろう。
今もなお、V2Xテクノロジに対応したアプリケーションは増え続けており、開発者はセンサデータを高精度測位、セルラー、近距離無線(SHO)と組み合わせる新しい方法を発見している。
この結果、これらのテクノロジをすべて車内、車の周辺で関連付けて実装するというアイデアやコンセプトも生まれている(図1)。
図1:IoTによるコネクテッドカーは、センサ、低コストの処理、無線通信、高精度測位、クラウドベースの分析と入力を統合することでV2Xの可能性を現実のものになる
自動運転と同様に、車線維持支援システムまたは車線逸脱警報システムを提供するヘッドアップディスプレイも興味深い例の1つだ(図2)。
図2:車線変更は特に危険であるため、補助付きまたは完全に自律的な車線変更システムを実現する場合、システムは、車両自身の位置と状態を認識するだけでなく、周辺における他の車両の位置、状態、意図も認識する必要がある
このためには、1m以下まで計測できる正確な測位が必要となるほか、ドライバーの意図だけでなく自分以外の車両の意図を認識できることが必要となる。また、精密な測位システムに加えて、運転速度や相対位置、近辺の車両の速度に関する遅延の少ない通信機能も必要となる。これらすべての情報を分析できるようになった時点で初めて、オンボードシステムによる車線変更の可否の指示が可能となる。
これに続くステップとしては、部分的な高速道路自動運転、次に高速道路での完全な自動運転、そして最終的な自動運転の実現が考えられる。
正確な測位システムを実現するために、多くの全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)が提供されている。ただし、機能面で真にグローバルであるGNSSは、米国の「NAVSTAR(Navigation Satellites with Time And Ranging、オリジナルの“GPS”)」と、ロシアの「GLONASS(Global Navigation Satellite System)」の2つだけであることに注意してほしい。
それ以外のGNSSとしては、欧州連合(EU)の「Galileo」、中国の「北斗衛星導航系統(BeiDou navigation satellite System:BDS)」、日本の「準天頂衛星システム(Quasi-Zenith Satellite System:QZSS)」、インドの「IRNSS(Indian Regional Navigational Satellite System)」がある。