つまりは、IoTデータを活用して経営やビジネスのデジタル化が進めば、どの業種業態にとっても、これまでの競争優位のあり方が変わる可能性がある。それがどう変わるか見通すことはできないが、まずは競合他社に引けをとらないためにも、IoTデータの活用は積極的に進めないといけないといったところか。
内野氏はそうした企業経営者の「危機感」も把握したうえで、同社のBIツールを役立ててもらえるようにしたいと強調した。同氏のIoTをめぐる危機感の話は、経営者の複雑な心境を物語っているように感じた。
「より多くのデータを集めることが、高いビジネス価値を生むとは限らない」 (ベリタステクノロジーズ 高井隆太 常務執行役員)

ベリタステクノロジーズの高井隆太 常務執行役員
ベリタステクノロジーズが先ごろ、企業内のデータの状況をくわしく調べたレポート「Data Genomics Index」の日本語版を発表した。同社の常務執行役員でテクノロジーセールス&サービス統括本部セールスエンジニアリング本部長兼コンサルティング部長を務める高井氏の冒頭の発言は、その発表会見で、情報管理ソリューションベンダーとしての見解を述べたものである。
Data Genomics Indexは世界中の5万社を超えるベリタスの顧客基盤から収集された数百億のファイルとその属性に関する分析結果を基に作成されたもので、こうした調査は業界初という。例えば、ファイルの40%以上が3年間にわたり誰もアクセスせずに放置されていることが判明し、これを改善すれば企業にとって相当のコストを削減できる可能性があるといった知見や行動指針を示している。
同レポートの詳細については関連記事を参照いただくとして、ここでは会見の冒頭で、この2月にシマンテックから分社して再スタートしたベリタスの事業スタンスを語った高井氏の発言が印象に残ったので取り上げたい。
同氏によると、情報管理ソリューションベンダーであるベリタスの事業スタンスは、次の3つの考え方がベースになっているという。1つ目は「データそのものではなく、データから生み出される“情報”にフォーカスしていること」、2つ目は「インフラではなく、アプリケーションの可用性を追求していること」、そして3つ目は「より多くのデータを集めることが、より高いビジネス価値を生むとは限らない」、すなわち冒頭の発言である。
興味深いのは3つ目の見解だ。聞きようによっては、ビッグデータ活用を否定しているようにも受け取れる。そう思ったので、高井氏に真意を聞いてみた。すると同氏は次のように答えた。
「大量に収集したデータには無駄な部分もあるし、不必要なリスクを抱えかねないものもある。それらを取り除くのが、すなわち情報管理だ。きちんとした情報管理を実施してこそ、データは高いビジネス価値を生む情報として活用できるようになる。それが本当にビッグデータを活用することでもある」
つまり、情報管理プロセスが重要で、そこにベリタスの存在価値があるというわけだ。新生ベリタスがビッグデータ活用時代にどれだけ存在感を示せるか、注目しておきたい。