古いITエコノミクスから新しいITエコノミクスへの移行
考えるべきは既存のITの経済学(エコノミクス)を新しいエコノミクスに移行することです。ここでいうエコノミクスとはいわゆる会計士が認識している経済学のようなものではなく、ITに取り組む新しい姿勢です。新しいITエコノミクスの基礎としては、「リキッドアプリケーション」「インテリジェントプラットフォーム」「コネクテッドエコシステム」という3つのアプリケーション戦略を挙げることができます。
リキッドアプリケーション
リキッドアプリケーション(変幻自在なアプリケーション)とは、ソフトウェアを構築するための手法の一つです。複数年にわたるシステム開発とは異なり、モジュールアーキテクチャや、“クラウドファースト・モバイルファースト” (クラウド活用・モバイル提供を優先させる) などといった特徴があります。
リキッドアプリケーションは固定的な仕様で持続するように設計されるのではなく、仕様変更を前提に設計されます。そのため、ソフトウェアは再利用可能な小さなモジュールの集合体で構成されます。こうすることでビジネス要求の変化による仕様変更の影響を局所化し、修正個所の特定を容易にします。場合によってはモジュールを切り離して新たなモジュールを追加するといった柔軟なシステム変更が俊敏にできるようになります。
例えば、北米のとある大型病院では、医療事務に関する業務システムをリキッドアプリケーションとして構築しました。随時発生する小規模な画面変更要求から、影響範囲の大きい法律、点数計算方法、連携対象システム、利用者権限、タブレット対応といった大規模変更要求まで、柔軟かつ俊敏に対応しています。
インテリジェントプラットフォーム
インテリジェントプラットフォーム (自律的な知能を持つ基盤) とは、アプリケーションが自ら理解し、行動し、学習することで、ソフトウェアの開発および運用を管理する最新の基盤です。インテリジェントプラットフォームは、インテリジェントオートメーション機能、コンテキスト認識機能、“自己回復機能”の上に構築され、構築されたシステム自身がエラーを認識し、原因を分析することができます。
その結果、自己回復するか、または最適な対策方法をサポートエンジニアに提案することができます。インテリジェントプラットフォームは、自律行動によってコストを削減して稼働時間を伸ばし、IT部門がビジネスの成長に貢献できるようにします。
例えば、プライベートクラウドを構築したある事業会社では、特定の仮想環境が過負荷で動作が遅くなった際、監視システムがリソースに余裕のあるほかの物理サーバ上に該当する仮想環境を自動でコピーし切り替えることで、自動的に負荷を平準化しています。過負荷による影響を解消する仕組みを構築しています。