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内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」

スリムなIT部門への警鐘 - (page 2)

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2016-04-13 08:00

ITの経営における重要性

 ITはコア業務ではないので切り離すという論理も以前はよく言われていましたが、デジタル化が急速に進展する現在においても本当にそうと言えるのでしょうか。多くの企業にとってITは確かに、事業としてはコアではないかもしれませんが、ビジネスインフラとしてはコアになっている業界が多くなっています。

 これまで企業の競争力の源泉は、資本力、生産力、商品力など規模の論理が働きやすい要素が多かったのは事実です。しかし、競争の激化、ビジネス環境の著しい変化、顧客や市場の多様性などによって、競争原理に変化が生じています。

 昨今では、変化に適応し、賢く生き抜いていく「人材力」の総和(≒「組織力」)が、企業競争力の重要な要素となってきています。いわば、「人と人との知恵比べ」の時代となっているのです。また、あらゆる局面でITが活用される時代において、「IT活用力」は、組織力にレバレッジを効かせる役割を果たします。一部の事業企画担当者やマーケティング担当者だけが情報を駆使して、他の従業員は粛々と定常業務に邁進するという業務形態ではなく、すべての知識労働者が情報という武器を持って、自律的に判断を下しながら戦っていかなければなりません。

今後IT部門に求められる役割

 そのためには、すべての従業員がITやデジタルデータを上手く活用することが求められます。また、業務改善を行ったり、新規のビジネスを立ち上げたいと考えた場合は、自ら必要となる情報システムの要件を明確に定義し、IT部門や外部ベンダーに的確にニーズを伝える能力を持つことが望まれます。

 しかし、一般的にユーザー部門の従業員はITの専門家ではなく、「何がしたいか」「どんな情報が欲しいか」ということはわかっても、それを「どのように実現するか」あるいはその情報を「どうやって手に入れるか」まで理解することは困難といえます。ユーザー部門の従業員には、自らの業務領域で専門的な仕事を遂行することが課せられており、技術革新の著しいIT業界の技術動向をつぶさにウォッチしておくことは不可能であり、またその任務は担っていないのです。したがって、ビジネスとITを橋渡しする専門家が必要となります。

 また、個々のユーザーがそれぞれの業務の都合に応じてシステム化を進めたのでは、全社的な視点での最適化を図ることができず、「システムの孤島」や「情報の孤島」を数多く生み出してしまうことになるでしょう。これは、コストや情報の整合性などの観点から望ましくありません。全社的(あるいはグループ/グローバル)な視点で、システム化の要件を取りまとめたり、中長期的な視点でITインフラの計画を立案したりする専門家が必要となるわけです。

 つまり、ビジネスとITの橋渡し役と、全社的かつ中長期的なIT戦略の立案および調整が、IT部門の本来的な任務ということになるのではないでしょうか。

 IT部門が分社化されたり、アウトソーシングの活用により規模を縮小された背景のひとつに、硬直的な給与体系、就労形態および人事評価体系にシステム技術者が適合しないという理由がかつてあったことは事実です。しかし、本社の人事制度を柔軟にすれば対応できるはずです。

 スリムな本社の名の下に、IT部門が空洞化し、中長期を見据えてITを戦略的に活用したり、全社的な視点でIT要件を取りまとめたりする人材が枯渇した企業は、ボディブローのようにじわじわと企業競争力を失っていくということが懸念されます。多くの企業では、IT部門の組織形態と具備すべき機能を再考する時期にきていると思います。

内山 悟志
アイ・ティ・アール 代表取締役/プリンシパル・アナリスト
大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストとして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は、大手ユーザー企業のIT戦略立案のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。最近の分析レポートに「2015年に注目すべき10のIT戦略テーマ― テクノロジの大転換の先を見据えて」「会議改革はなぜ進まないのか― 効率化の追求を超えて会議そのもの意義を再考する」などがある。

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