IBMの「Watson」が米国のテレビクイズ番組「Jeopardy」で勝利を収めて5年が過ぎた今、同社はようやく時代がコグニティブコンピューティングに追いついてきたと述べている。GPU Technology ConferenceにてIBMは、同社の「POWER」サーバおよびGPUによって加速したWatsonのサービスの進化について語った。
5年前、WatsonはJeopardyでの勝利によって一気に世界の脚光を浴びた。ただし、IBMフェローでWatsonグループのトップを務めるRob High Jr.氏は、「Watsonがすばらしいのは、単に(Jeopardyの対戦相手だった)Ken Jennings氏に勝利したからではない」と、GPU Technology Conferenceの基調講演にて述べている。同氏によると、Watsonのすばらしさは膨大な情報量を処理し、投げかけられた質問の意味を把握できたところにあるという。
IBMでは、こうした機能が他にどういった分野で役立つかを検討。最初に思いついたのは医師を支援できるのではないかということだった。しかしその後、IBMが「コグニティブコンピューティング」と呼ぶこの機能で恩恵を受ける産業は多岐に渡ることが判明した。
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コグニティブコンピューティングと人工知能(AI)の違いは少し曖昧だ。大きな違いがないことはHigh氏も認めているものの、同氏によるとIBMのコグニティブコンピューティングは、人間の能力を置き換えるのではなく、能力を拡大するという。ただし、研究者の多くはAIを同様に定義しているため、WatsonとAIの違いを挙げるとすれば、Watsonはこれまでのように人間がコーディングして開発した機能とディープラーニングを組み合わせたサービスだという点にあるといえる。
Watsonのようなコグニティブシステムには4つの特徴がある。自ら学び、NUI(ナチュラルユーザーインターフェース)をサポートし、専門性が高く(高度な正確性が求められる)、新たに得た情報を基にして時と共に進化するという点だ。また、膨大なデータを処理するにあたり、こうした機能を大規模に活用できることが求められる。IBMでは、1日に生成されるデータの量は2.5エクサバイトだとしており、High氏によるとこの量はHarry Potterの書籍6500億冊分に相当するという。もちろん生成されるデータの中には、テキストだけでなく画像やビデオも含まれる。
Watsonを進化させるため、IBMではまず一般的な知識をWatsonにたたき込んだ。例えば、「1シーズンでホームランを40本打ち、盗塁を40回成功させた最初の選手は?」といったような知識だ。その後、特定の分野で誰に聞いていいのかわからないような内容をWatsonの辞書に詰め込んだ。