置換対象として例に挙げたのが、銀行の国際間決済や証券取引など銀行業務で行われている中央集権型元帳だ。ブロックチェーンを利用した分散型元帳に置き換えることで、コストが10分の1に抑えられるため、世界各国が注目しているという。
そのブロックチェーンの動向として注目すべきは、米企業R3 CEVが主導して、日米欧43の大手金融機関が参加するコンソーシアム「R3」だ。日本からは三菱UFJファイナンシャルグループやみずほファイナンシャルグループなど大手銀行が参加しているが、同コンソーシアムが規格を策定すると、未参加の他行は仕組みに対価を払わねばならなくなると警鐘を鳴らし、「市場が席巻される前に、日本企業もブロックチェーンプラットフォームの実現を目指すべき」(荻生氏)と主張した。
荻生氏は金融機関以外にもマイナンバーなど公共部門での活用例を提案。「情報の透明化でデータがどこで使われているのか確認できる」(荻生氏)とメリットを述べた。「ブロックチェーン:特定の権威に依らない『トラスト』の確立」ではNASDAQなどの事例を紹介している。
技術と人材不足が課題となるアナリティクス
「アナリティクスの『産業化』」では、日本企業の課題について説明があった。デジタル化が遅れる理由として、組織の縦割りと目的意識の非共有が問題点と指摘し、一定以上の役職に就く人材がどのような意識で取り組むかが重要だという。その具体的手法として、経営層の支援やアナリティクスチームの責任と権限を明確にし、内部連携の促進をうながすべきだと岩渕氏は強調する。
アナリティクスチームについては「分析技術と人材不足が課題。そのため優秀なベンチャーを大企業が囲い込むよりもオープンな技術に頼るべき」(岩渕氏)と提言した。エコシステムを作り出す上でビジネスの核は社内に置くべきだが、UXやコミュニケーション、分析や可視化といった部分は社外に出せると説明し、パナソニックとの共同調査結果を披露。ユーザー動線を見える化し、経営層に対するアピールの有用性を強調した。「アナリティクスの『産業化』」ではAnthemなどの事例を紹介している。
2015年版ではワークスタイル変革を取り上げたが、同書ではCSR(企業の社会的責任)が重要なキーワードになりつつある背景から、「技術の飛躍的進歩がもたらす社会へのインパクト」を取り上げたと安井氏は説明する。DTCによれば社会的インパクトへ取り組み企業タイプを4種類に分類し、株主価値志向タイプは11%、企業内取り組みタイプは53%、ビジネス活用タイプは33%、社会変革志向タイプは3%に留まる。
「先進国のみ可能だった取り組みがデジタルの力で発展途上国の水問題などを改善可能になった」(安井氏)ように、社会に与えるインパクトがそのままビジネスチャンスにつながることから、CSRの重要性を訴えた。
企業ブランドの向上は優秀な人材獲得にもつながることから、「経営理念を発信しないと人材が集まりにくくなっている。日本でも増加傾向にあるため、今後の重要課題だ」(安井氏)という。「技術の飛躍的進歩がもたらす社会へのインパクト」ではGoogleやQualcommの事例を紹介している。