10年前、Jeet Samarth Raut氏の母親は医師の診察を受け、がんは患っていないと診断された。しかし、この診断は誤りだった。
Raut氏は、このミスが起きた理由の一部は、住んでいたのがイリノイ州郊外の小さな町であり、画像診断医の専門性が高くなかったからだと考えた。理由の一部は、それが珍しい種類の乳がんだったからかもしれない。また別の理由は、医療画像の読影は難しい場合も多いということにあったかもしれないとRaut氏は言う。
この経験によって、「住んでいる場所によって、医療画像を診断する画像診断医の知識に大きな差があるという事実を痛感させられた」という。Raut氏とやはりコロンビア大学の学生だったPeter Wakahiu Njenga氏は、医師の正確な診断を支援するため、人工知能(AI)を用いて医療画像に写っている異常の特定を助けるプロジェクトであるBehold.aiを設立した。
Behold.aiは、画像診断医の仕事を奪おうとしているわけではない。その狙いはむしろ、読影をより速く、正確にできるようにすることだ。
「これは、文章を書くときにケアレスミスがないかチェックするスペルチェックのようなものだ」とRaut氏は述べている。
読影する必要がある医療画像の数は増え続けている。Njenga氏によれば、この数字は2006年以降年率14%から26%のペースで増加しているという。2006年には、世界における1000人当たりのCTスキャンの数は180枚、MRIは72枚だった。この数字は、「画像診断医がこの量に対応するのを支援するため、何らかの形で画像を自動的に解析するシステムが必要なことを示している」とNjenga氏は言う。
Behold.aiのシステムは、医療画像を調べて、類似する画像からの学習内容に基づき、医師に提案を行う。「コンピュータが物体やイメージを発見する能力は向上している。たとえば、Amazonのスマートフォン『Fire Phone』(編集部注:現在は販売されていない)は、画像をスキャンして、それがAmazonで扱っている製品であれば、見つけてユーザーに知らせることができる」とRaut氏は言う。また、Facebookでは、写真を調べてその人物が誰かを教えてくれる。
「画像認識の分野は大きく進歩しており、それを医療に応用したいと考えている。これによって、小結節や動脈瘤などがあるかを調べることができる」(Raut氏)
Behold.aiは病院と提携して実際の患者のデータセットを使用し、学習システムが質の高いデータを使用できるようにしている(Twitter上のやり取りを通じて「おしゃべり」の仕方を学んでしまった、Microsoftのチャットボット「Tay」の誤りを避けようとしているのだ)。