海外コメンタリー

新生マイクロソフトがAzureとクラウドを戦略の中心とする3つの理由

Keith Townsend (TechRepublic) 翻訳校正: 藤本京子

2016-04-19 06:00

 Microsoftの前最高経営責任者(CEO)、Steve Ballmer氏は、よく「Develoer(開発者)」という言葉を叫んでいたものだが、同氏は開発者がMicrosoftのクラウドの未来にどれほど重要かちゃんと理解していただろうか。Ballmer氏といえば、クラウドの重要性に気づくのが遅れたとされる人物だ。しかし生まれ変わったMicrosoftは、すべてクラウドを中心として動いているといわれている。

 アナリストは投資を見極める際、人事や組織改革の発表、市場フォーカスなどによって企業の戦略的分野を判断しようとするが、技術者の私は実際の技術を詳しく見ようと考える。Microsoftが手がけるさまざまな技術の中から、ここでは3つの分野について、クラウドの世界と従来の「Windows」を中心とした世界に対する同社の取り組みを語ろうと思う。皮肉なことに、これらの分野は開発者をクラウドサービスである「Microsoft Azure」に引き込ませようとするものだ。

1. コンテナ技術

 「Hyper-V」コンテナ、「Nano Server」、「Docker」など、Microsoftのコンテナ戦略は幅広い。過去数カ月にさまざまなベンダーやデータセンター管理者からコンテナについて話を聞いたが、本番環境でコンテナを稼働させているユーザーはほんの数社にすぎない。コンテナの採用は今後本格化することが見込まれるが、今重要なのは開発者に興味を持ってもらうことだ。

 コンテナは、開発プロセスにおいて非常に役立つツールであることがわかっている。仮想マシンよりも軽くて速いため、開発者がデバイス上で複雑なマイクロサービスアプリを開発する際、ノートPC並のパワーを駆使することができるのだ。MicrosoftはWindows 10にHyper-Vコンテナ機能を取り入れ、Dockerとパートナーシップを組むことで、開発者が慣れ親しんだ現在のコンテナ環境に近づけようとしている。長期的には、Azureへの入り口となるようにしたい考えだ。

2. WindowsへのBash搭載

 慣れ親しんだ開発環境といえば、MicrosoftのLinuxに対する考えは180度完全に変わった。Azureアプリストアを見てみると、事前構築済みのLinuxテンプレートやPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)が数多く並んでおり、Microsoftが単にLinuxベースのPaaS製品を再販する以上の分野に踏み込んでいることがわかる。開発者はクラウドサービスを活用するにあたり、Linuxベースの開発環境が便利だと感じているのだ。.NET開発者がこうしたクラウドサービスを利用するにあたって指導書やアドバイスを検索すると、その多くはLinux向けに書かれているのである。

 Microsoftによると、同社が完全なLinuxサブシステムを構築し、Windows 10上で「Ubuntu」を稼働できるようにした主な理由はそこにあるという。新しいサブシステムにより、Ubuntuの「Bash」がWindows上でネイティブサポートされるほか、VIやPerlコンパイラなどのLinux実行ファイルもWindowsで走らせることが可能となる。

3. PowerShell

 PowerShellは新たなイノベーションではないものの、Microsoftのクラウド戦略にとって重要なコンポーネントとなるものだ。クラウドユーザーの多くはPowerShellなどのツールにこだわることなくAzureとAWSの両サービスを利用しているが、Windows 2016にとってPowerShellは重要なコンポーネントなのだ。クラウドインフラを管理するにあたり、DevOpsツールは必須なのである。

 ウェブスケールのように大規模での展開となると、数十万ものサーバーを管理するにあたり開発者やオペレーターはパワフルな言語が必要となる。AWSにおいては、AWS APIが他サービスとの大きな差別化要素のひとつとなっている。

 Windowsは、コマンドラインによる管理があまり得意ではない。その解決策となり得るのが、オブジェクト指向のPowerShell言語だ。Windows Server 2016のNano Serverは、入出力デバイスが接続されない「Windows Server」で、管理するにはPowerShellが必要となる。PowerShellによりMicrosoftは、ウェブスケールアプリケーションにおけるLinuxとの差を縮小できるはずだ。

すべての道はAzureに通ず

 こうしたインフラに対するMicrosoftの最近の戦略は、すべてAzureに導くためのものである。Microsoftは、インフラを利用するにあたりひとつの方法しか用意していないわけではなく、開発者の希望を取り入れている。Microsoftが今後も.NET戦略をサポートし前面に押し出してくることは間違いないと思われるが、Windowsオンリーの戦略はすでに過去のものなのだ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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