この経歴からすると、要職を歴任するとともに中堅中小企業向け事業やパートナー展開に精通するエキスパートでもあるようだ。シスコが注力するCisco Start事業でどのような手腕を発揮するか、注目しておきたい。
「アプリのモバイルファースト化に伴いセキュリティ対策がますます重要になる」(米MobileIron Barry Mainz CEO)
企業向けモバイル管理システムを手掛ける米MobileIronの日本法人であるモバイルアイアン・ジャパンが先ごろ、モバイル端末からクラウドサービスを利用する際のセキュリティ対策ソフトウェア「MobileIron Access」を国内で提供開始すると発表した。
米MobileIron Barry Mainz CEO
発表会見には、1月に米国本社のCEOに就任したMainz氏が来日して登壇し、新製品の説明とともにCEOとしての抱負を語った。同氏の冒頭の発言は、新製品の必要性を強調したものである。
MobileIron Accessはクラウドサービスのアプリケーションやデータを、企業が許可する端末やユーザーから利用できるようにするアクセス管理ソフトウェアである。当初の対応端末はiPhoneやiPadなどのiOSデバイス、利用可能なクラウドサービスはBox、Google Apps for Work、Microsoft Office 365、Salesforceで、いずれも今後拡充していく計画だ。
同社がかねて提供しているクラウド型モバイル管理サービス「MobileIron Cloud」は、「Enterprise Mobility Management(EMM)」と呼ぶソリューションだ。具体的には、端末を管理する「Mobile Device Management(MDM)」に加え、業務アプリを管理する「Mobile Application Management(MAM)」、ファイル配信などを行う「Mobile Content Management(MCM)」の機能を備えている。今回発表されたMobileIron AccessもEMMを強化する機能となる。
これまで企業におけるモバイル管理については、MDMが注目されてきた。だが、企業がモバイルを戦略的に活用していくためには、MDMだけでは役不足で、端末だけでなく業務アプリケーションやファイルなどのコンテンツを一元的に管理できるEMMが必要になるというのが同社の主張である。
2007年設立のMobileIronは、企業向けモバイル管理システム分野に特化したベンチャー企業だ。MDMからEMMへと拡大し、オンプレミスからクラウドへの対応も先陣を切ってきたという。2009年の初受注以来、顧客数は世界で1万500社以上を数え、2015年の売上高は前年比13%増の1億6500万ドルと着実な成長を遂げている。
Intel傘下の組み込みソフトウェア大手Wind RiverのプレジデントからMobileIronの最高経営責任者(CEO)に転身して3カ月余りが経ったMainz氏は、「世界的に見て企業におけるモバイル活用の潜在需要はまだまだ大きなものがある。それに伴って、しっかりとした管理やセキュリティ対策が一段と求められるようになる。ベンチャーながらも確固たる顧客基盤を持つ当社のソリューションはこれから加速度をつけて広がっていくと確信している」と抱負を語った。
ただ、この分野の競争はここ数年、どんどん激しさを増しており、IBMやSAPなどの大手による専業ベンダーの買収も相次いでいる。そうした中で、確固たる顧客基盤を築きつつあるMobileIronの奮闘ぶりがにわかに目立つ形となっている。
今後、大手と真っ向から戦っていけるのかという筆者の質問に対し、Mainz氏は「私自身、その勝算があるからMobileIronに移ってきた。これから事業を大きくしていく過程にワクワクしている」と答えた。そんなMainz氏の経営手腕に注目しておきたい。