PwCコンサルティングのディレクターを務める関良樹氏によると、デジタル化のポイントは2つ。データ駆動型のコミュニケーションとコンテンツだ。「日本でいまだに強い影響力を持っているのはテレビ」と関氏。それゆえ、日本においてはテレビを軸に、ウェブ、さらには実店舗などリアルな世界に派生させるマーケティング手法が今後も広く実施されると指摘する。
PwCのディレクターを務める関良樹氏
例えば、テレビでパンケーキに関するCMを放送した際に、商品名、CMのクリエイティブ、出演者、BGM、広告主といった情報を「メタデータ」としてリアルタイムに近いタイミングで調べ、把握する。そのデータを基に、インターネット上でそのパンケーキが話題になるような情報を、TwitterやInstagramに書き込むことで、情報の拡散を狙う。
影響力の強いテレビでの露出を、その熱が冷めないうちに拡散できる潜在的な可能性が秘められているようだ。
テレビCMに関する情報を専門的に把握するサービスもさまざま出てきている。その1つであるゼータ・ブリッジは、CMの効果を示す接触率や離脱率といったデータを独自に算定し、ウェブサイトで無料公開している。4月4~10日の関東地区での「CM接触ポイントランキング」では、リクルートホールディングスの「タウンワーク 真っ先に進化。編15秒」が1位。特定のCM別、時間帯別、曜日別、地域別などの各種レポートについては、テレビとネットの連携を図る企業などに向けて有料で提供する。
2016年4月4日~4月10日の関東における「CM接触ポイントランキング」(出典:ゼータ・ブリッジ)
「基本的な欲求に沿った食料品やエンターテインメントなどは特に施策の対象となりやすい」と関氏。見せ方であるコンテンツについても、今後さらに重要性が増すという。
デザインについても、ユーザーインターフェースやユーザーエクスペリエンス(UI/UX)に専門性を持つクリエイターを獲得する動きが強まっている。前述のIBMと同様に、PwC米国法人もクリエイティブ系代理店のBGTパートナーズを2013年11月4日に買収している。
一方、2016年は米大統領選が佳境を迎える。「旋風」を巻き起こしているDonald Trump氏は、講演する地域のデータを調べ、それに基いて内容からネクタイの色まで変えているという。米国民の支持率をコントロールできるのだとすれば、データを徹底的に分析するデジタル化の怖さがここに1つ現れているとも言えそうだ。