IoTセキュリティの設計図

IoT製品の設計--ライフサイクル管理とセキュリティで考慮すべきポイント - (page 2)

Manoj Kumar Rai(マノジ・クマール・ライ) ジェムアルト

2016-05-20 07:00

 GSMA(携帯通信事業者の業界団体)仕様の埋め込みSIM(eSIM)を使ったリモートのワイヤレス(OTA)のサブスクリプションマネジメントにより世界中どこにいても任意の通信事業者に安全な環境でデバイスを接続できる統一された標準規格を持つ。これにより製品やサービスの設計、開発、展開を劇的に簡素化することができる。GSMA仕様のeSIMによって、デバイスメーカーは製造段階で通信事業者へのサブスクリプションを気にすることなく統一したバージョンの製品を製造し、流通における負荷を軽減できる。

 エンドユーザーやプロバイダの手元に届くまで、どの製品も汎用性を持ち続ける。またエンドユーザーとソリューションプロバイダも利用環境と場所に合わせた通信事業者と料金プランを選べるようになり、優れた相互接続性と柔軟性から大きなメリットがある。さらにデバイスの使いはじめから使い終わりまでのライフサイクル全体にわたり、外出先でさまざまなコネクテッドデバイスを動的に追加したり、ローミング時に料金が安い通信事業者へ切り替えたりすることが可能だ。

 世界中の通信事業者は、インフラに過度な投資をすることなくコネクテッドデバイス/アプリケーションのライフサイクルを動的に管理できる環境に関心を寄せている。また近い将来、あらゆる物がインターネットにつながるようになり、無限のビジネスチャンスを活用できるようになっていく中で、利用者に付加価値性の高いサービスを提供することで競合優位性を高めたいと考えている。

 質の高いすべてのデバイスマネジメントソリューションに共通する最も重要な機能は、デバイスをワイヤレスで管理する能力だ。例えば、コネクテッドデバイス内のeSIMやセキュアエレメントとの通信、アプリケーションのダウンロード、管理などに使用するワイヤレスOTA(Over-The-Air)などが挙げられる。これらは、最も実用的で費用対効果と効率性に優れたテクノロジとして、新しいサービスを導入したり、ソフトウェアアップデートやパッチを適用してデバイスのコンテンツや挙動を変えたりするためのシームレスでセキュアな環境を提供する。

 サービスプロバイダはすべてのデバイスを一元管理できるようになり、ダウンタイムやサービスの中断といったインシデントの発生を大幅に減らせることから、OTAテクノロジは特にDR(災害復旧)管理で高い効果を発揮する。質の高いデバイス管理サービスによって、通信事業者はデバイスのライフサイクル全体を通じたリモート管理が可能になり、すべての関係者のコスト削減と複雑さを軽減できる。

 また、どのような遠隔地からでもOTAによるセキュアなモニタリングサービスと診断サービスを実行し、開発したIoTデバイスの問題の発見や診断、QoS(サービス品質)とパフォーマンスの向上を実現することなどが可能になる。企業はこれらのサービスを使ってアラートを設定することで、事実上あらゆる情報をリモート環境で収集し、是正措置をリアルタイムに実行できる。さらに、不正アクセスやサイバー攻撃の疑いがある場合には被害が発生しないようにデバイスをロックすることさえ可能だ。

 例えば、デバイスからの信号が指定の強度を下回った場合や保冷車内の温度が安全温度を超えた場合などでも、IoTデバイスをリアルタイムにモニタリングすることで適切な担当者がタイムリーに対応し、サービスの障害を予防できる。

 同様に、デバイスで異常な挙動や故障が見つかった場合も、世界のどこからでもエキスパートが適切に対応し、調整することができる。

 企業が「ビッグデータ」の価値を完全に引き出すためには、対象とする複数のコネクテッドデバイスに分散しているデータを収集し、これらのデータを実際のアクションにつながる知見へと迅速に変え、ビジネスの効率と生産性の向上を実現することも同じくらい重要だ。幸運なことに、市場には企業のカスタムアプリケーション構築を支援するサービスとツールのセットを実装したプラットフォームが複数存在しているので、これらを利用することが可能だ。

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