松岡功の一言もの申す

日本のIT大手4社が“メインフレームのモダナイゼーション”に取り組む理由

松岡功

2016-04-21 11:42

 メインフレームを中心とした基幹系システムをどのようにモダナイゼーションしていくか。日本のIT大手4社が協力してこの問題に取り組み始めた。その背景と狙いはどこにあるのか。

業界を挙げたプロジェクト発足へ動いた富士通とNTTデータ

 富士通とNTTデータが先ごろ、独立行政法人情報処理推進機構/ソフトウェア高信頼化センター(IPA/SEC)が設立したシステム構築上流工程強化部会のモダナイゼーションWG(ワーキンググループ)に創立メンバーとして参画したと発表した。

 同WGは、現行の仕様と機能を踏襲することを前提とした結果、開発期間やコスト超過などの問題に陥りやすいシステム再構築(モダナイゼーション)にいかにアプローチすべきか、具体的なプロセスを示すことを目指した検討チームである。

 メインフレームを中心とした基幹系システムを対象としており、ユーザー企業やITベンダーからなる合計9社がメンバーとして参加。NECと日立製作所も名を連ねており、日本のIT大手4社が協力して“メインフレームのモダナイゼーション”に取り組むことになった。

 この取り組みは富士通とNTTデータが昨年来進めてきたもので、業界全体の活動にすべく両社がIPA/SECに働きかけ、モダナイゼーションWGの設立に至った。両社は同WGに創立メンバーとして参画した理由について、次のような共同メッセージを発信している。

 「モダナイゼーションのプロジェクトにおいて発生する各種問題については、特に上流工程と呼ばれるシステム開発の初期段階でのユーザー企業とITベンダーの間の認識齟齬や、双方の考慮漏れが大きな要因になると捉えている。この課題を解決するためには、システムを利用する立場であるユーザー企業とITベンダーの双方が、システム開発の上流工程において検討すべき事項を共に精査し合意するための、モダナイゼーションに関する標準的なガイドラインが不可欠であり、業界を挙げてこれに取り組む必要があると考えている」

2017年1月をめどにモダナイゼーションのガイドライン作成へ

 モダナイゼーションWGの活動内容としては、現行の踏襲を前提に期間とコストを決定してしまうモダナイゼーションの事例に共通の課題を分析・整理し、システム再構築に共通する課題を克服して、モダナイゼーションに取り組むベースとなるシステムの構築を可能とすることを目指すとしている。

 そのうえで、再構築時に陥りやすい問題を踏まえたリスクをユーザー企業とITベンダーの間で共有し、システム化計画を作るための手引きとして、レガシーシステムに代表される難易度の高い再構築時にいかにアプローチすべきかを示すガイドラインを2017年1月をめどに作成し、IPA/SECのホームページなどで公開する考えだ。

 日本の大手企業が利用する基幹系システムでは、依然としてレガシーなメインフレームが全体の2割程度を占めているとも言われる。これをどのようにモダナイズし、新たなプラットフォーム上へ刷新していくかという課題は、昨今の“企業のデジタル化”の動きと照らし合わせると喫緊の対応が求められている。

 果たして、日本のIT大手4社がユーザー企業とともに取り組み始めたメイフレームのモダナイゼーションは思惑通り成果を上げることができるかどうか、注目しておきたい。

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