仮想環境向けデータ保護ソフトウェアを提供するVeeam Softwareが日本で事業を本格展開する。日本法人であるヴィーム・ソフトウェアは4月21日、国内初となる事業戦略説明会を都内で開催。24時間365日のビジネス環境を必要する企業向けに製品を提供する。
Veeamの調査によれば、2020年末まで世界人口の42%にあたる34億人がインターネットにアクセスし、210億ものデバイスがインターネットにつながるという。2017年までワークロードがミッションクリティカルになるため、常にデータやアプリケーションにアクセスできる環境は必須となることは改めて述べるまでもない。
Veeam Software プレジデント兼CEO Ratmir Timashev氏
「Always-On Enterprise」という24時間365日稼働するビジネス環境を求める世界中の企業向けに、Veeamプレジデント兼最高経営責任者(CEO)であるRatmir Timashev氏は「Availability for the Always-On Enterprise」というキーワードをもとに「“アベイラビリティ”を再定義する」と発言した。
Timashev氏の言うアベイラビリティは日本語の“可用性”ではなく、確実に短時間でデータを復旧させながら、安価に導入できるソリューションだと説明する。大型クルーザーを例に挙げて「船内のサービスの多くは常にデータセンターやソフトウェアに依存し、何らかの理由でサービスが提供できない場合、企業のブランドイメージは大幅に低下する」と述べた。
具体的な影響として、ダウンタイムコストは1時間あたり平均8万ドル、データロスコストは1時間あたり平均9万ドルがそれぞれかかるという。システムのダウンタイムがもたらすものとして、顧客の信用失墜は68%、ブランドイメージの失墜は62%、社員の自信喪失は51%低下すると考えるIT部門の意思決定者の声を紹介。このようにアベイラビリティを無視する企業は年間1600万ドル(約17億円)のコスト増につながると言う。
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こうした課題を解決するものとして、vSphereやHyper-V上で動作する仮想環境のバックアップやリカバリ、リプリケーションの機能を提供する「Veeam Availability Suite」、現地時間4月5日に発表した災害復旧(DR)対策としてバックアップやレプリケーションをオーケストする「Veeam Availability Orchestrator」をアピールした。
Timashev氏はまた、バックアップ&リカバリという概念はメインフレーム時代のコンセプトであると語り、データ量やアプリケーションの数が圧倒的に増加した現代では通用しないと言う。同社は新たなアプローチとして、常にデータを扱えるようにするため15分未満の目標復旧時間(Recovery Time Objective:RTO)と目標復旧地点(Recovery Point Objective:RPO)を達成する自社製品群で「高速リカバリ」「データ損失の回避」「検証済みの保護」「データの活用」「可視性の向上」が可能と主張した。
Availability Suiteなど同社製品群の構造。マネージドクラウドやパブリッククラウドと接続し、仮想マシンのスナップショットを作成して保護する
ヴィーム・ソフトウェア カントリー・ダイレクター 大越大造氏
クライム 執行役員 ソフトウェア事業部部長兼プロダクト・マーケティング・スペシャリスト 川上真氏
Veeamはすでに2015年からマレーシアや香港、中国本土への参入を果たしてきたが、アジア全域でのVeeamブランドの存在感強化を図るため、日本市場への本格参入を決定した。日本法人は、2015年の設立から約5カ月で27社のリセラーと契約し、2016年末までに300%の成長を目標としている。
日本国内ではすでに約500社が同社製品を採用し、今年は前年度比2倍の成長を目標に掲げた。日本法人カントリー・ダイレクターの大越大造氏は、「弊社はこれまでパートナー企業やSIer(システムインテグレーター)の意見を尊重してきたが、確実にエンドユーザーにリーズナブルかつ優れた製品を提供することを優先し、レガシー的な環境を覆すアベイラビリティを推進していく」と述べた。
Veeamは全世界でリセラーとパートナー経由で製品を提供してきたが、長年パートナー関係にあるクライムに加えて、新たにデジタルテクノロジーとネットワールドとの戦略的パートナーシップを集結し、国内で製品を提供する。
以前からVeeamパートナーネットワークに加入してきたクライムの執行役員 ソフトウェア事業部部長兼プロダクト・マーケティング・スペシャリストである川上真氏は、「(Veeam Backup & Replicationの)顧客によっては東京-大阪間、東京-台湾と国をまたいでリプリケーションしている」と説明し、導入事例として大学やオークション企業、動物医療関係企業などを挙げた。
各種製品は1~3年間のサブスクリプションライセンスで提供し、対象は仮想マシンホストの合計CPUソケット数単位でライセンス付与となる。Timashev氏はハードウェアで同様の環境を構築するには非常に高額になるが、平均的な環境では2万~3万ドル程度で提供できると説明した。