一方、金融機関にとっても、金融ITの発想を変えるような大きな動きが見受けられる。次に、金融機関におけるテクノロジ活用の変遷(図表1)について、顧客やチャネルなどの変化と合わせて見てみよう。
図表1:金融機関におけるテクノロジ活用の変遷。出典:アクセンチュア
顧客 スマートフォンの利用率が60%を超える中(※2)、ネット接続したモバイルや端末の普及とソーシャルネットワークの利用拡大により、ソーシャルネットワークおよび顧客の嗜好・生活スタイルなどの情報が入手可能になりつつある。(※2:総務省「平成26年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」)
チャネル 顧客接点は金融機関が用意するものから、「顧客の身近にある端末」からアクセスする手段に変化。また、VR(Virtual Reality/仮想現実)やAR(Augmented Reality/拡張現実)などの表現能力自体も圧倒的な向上が見受けられる。
アプリケーション・データ リアル世界のありとあらゆる行動・事象が端末などを通じてデータ化され、消費者や企業にリアルタイムに還流することで、その行動や判断の最適化や迅速化が可能となっている。
インフラ コンピューティングパワーやネットワーク、ストレージといったITインフラは、キャパシティの制約を受けず、必要なだけ都度集めて使うことが可能となっている。
このような環境下において、情報の非対称性、IT投資が参入障壁になりにくくなった結果として、従来金融機関が提供してこなかった領域や顧客セグメントに対して、新たな付加価値をつけた金融類似サービスを提供するプレーヤーが生まれやすい構図となっている。
なお、これらプレーヤーとその事業ドメインに関しては、次章で詳しく述べることとしたい。そして、金融機関にとっては、この様な顧客ニーズの変化、テクノロジ環境の変化を踏まえ、新たな付加価値を顧客に提供するべき、かつ提供できるタイミングが到来したととらえるべきであろう。