世界中に点在するコンピュータにデータを分散し、非中央集権ネットワークを作り出すことで、データの破壊や改ざんを困難するブロックチェーンは多くの注目を集めている。また、IT技術を駆使して金融サービスの新規創出や見直しを図るFinTechも同様に注目されている。この状況を踏まえて、日本マイクロソフトは4月25日、Microsoft Azure上でブロックチェーンを提供する「Azure BaaS(Block Chain as a Services)」の概要と、同社のFinTech分野での取り組みを説明するプレスセミナーを開催した。
日本マイクロソフト エンタープライズビジネス 第二インダストリー統括本部 金融サービス営業本部 本部長 綱田和功氏
同社 エンタープライズビジネス 第二インダストリー統括本部 金融サービス営業本部 本部長 綱田和功氏は、2015年9月に金融庁が発表した平成27事務年度金融行政方針の一文「IT技術の急速な進展により金融にも大きな変革の動きがみられている。FinTechと呼ばれる金融・IT 融合の動きが、金融業や市場の姿を大きく変えていく可能性が高まっている」を引用し、「従来の規制が技術革新を阻んではいけない。今後も規制緩和は進むと予測する」(綱田氏)と説明した。
また、モバイルやクラウドなどの技術革新はFinTech分野へも影響を与え、ベンチャーキャピタルによるFinTechへの投資拡大、大手金融機関やSI企業がブロックチェーンの実証実験を本格始動しており、「新しいものが生まれる土俵が作られつつある」と綱田氏。
既にMicrosoftは4月にR3(日米欧43行が共同して結成したコンソーシアム)との提携を発表し、ブロックチェーン技術の金融機関利用における標準化を推進すると表明している。日本マイクロソフトもみずほフィナンシャルグループや電通国際情報サービス、カレンシーポートと協働して、ブロックチェーン技術の実証実験を開始したことを2月に発表。ブロックチェーンそしてFinTechを取り巻く環境は少しずつビジネスの世界に浸透しつつあるのだ。
Microsoftは具体的なアプローチとして、「Azure BaaS」をAzure上で稼働させる。Azure BaaSは、Ethereum(イーサリアム)やrippled(リップル)、IPFSなどのオープンソースのブロックチェーン技術に対して、Azure Marketplaceを通じて開発・実験環境を提供するソリューションである。日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 クラウド&サーバー製品マーケティング部 エグゼクティブプロダクトマネージャー 大谷健氏は、「ブロックチェーンを使った開発を加速化させる」とAzure BaaSの特徴を説明。近日中にサービス開始時期のアナウンスが行われる。
日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 クラウド&サーバー製品マーケティング部 エグゼクティブプロダクトマネージャー 大谷健氏
「Azureの地域サポート範囲はAWS(Amazon Web Services)の2.5倍、Googleの7倍まで成長した。AzureをIaaSとPaaSに切り分け、ブロックチェーン開発を加速させるビルディングブロックの提供に注力していく」(大谷氏)
また、日本国内のフィンテックベンチャー企業への支援も行っていく。「MUFG FinTechアクセラレータプログラム」への協賛や、約70万円の開発ツールと最大270万円のクラウド環境、技術サポートなどを行うMicrosoft BizSparkや、Microsoft BizSpark Plusを用意。既にこれらの支援プログラムを利用した企業として、ビットコインとブロックチェーンの専門企業bitFlyerや、資産や資産価値移転のブロックチェーン企業カレンシーポートなどの社名を挙げた。
さらにブロックチェーンエコシステムとして、金融系企業とFinTech系企業間を結ぶSIerやコンサルタントに注目し、SIerが実際に行うシステム開発をAzure BaaSでサポートする。大谷氏は「日本の金融企業はシステム業務をアウトソーシングしているため、SIerなしではブロックチェーンのビジネス展開は難しいという仮説を持っている」と持論を述べた。
Azure Marketplaceにブロックチェーンのコーナーを設けて、ブロックチェーンプラットフォームを含めた仮想マシンなどがダウンロード可能になる