OSSとビッグデータアナリティクス

ビッグデータの本質は「アナリティクス」の繰り返し - (page 2)

島田 茂(日本テラデータ)

2016-05-10 07:30

データ収集に関するイノベーション

 1.のデータ収集に関するイノベーションは、モノのインターネット(Internet of Things: IoT)関連商品の製品化で第三の産業革命といわれるメイカーズ(MAKERS―21世紀の産業革命が始まる、クリス・アンダーソン、NHK出版)などのことだ。

 全てを把握できるほど十分なデータがそろっているケースは少ない。必要なデータを取得するためのセンサデバイスなどもまだ開発段階である事も多いのが実情である。

 しかし、IoT、Industry 4.0など、デジタル技術の発達と相まってデータ取得のための技術は加速している。これらの象徴的なデバイスとしてドローンがある。部品の約6割はスマートフォンと同じ部品で構築され、上空から映像を撮影するのにヘリコプターをチャーターする必要がなくなり、撮影コストが驚異的に下落している。

 Intel/ARMなどが開発するCPUの低価格化だけでなく、3Dプリンタの普及や「Raspberry PI」に代表される「OSH(Open Source Hardware)」も普及が始まっていると同時に、センサデバイスからシステムにデータを取り込むためのOSS(Open Source Software)も進化し、一気に利用が拡大している。

 例えば、OSSのリアルタイムストリーミング技術の1つである「Apache Kafka」をさらに強化するような活動も行われている。

アナリティクスソリューション実現に関するイノベーション

 2.のアナリティクス・ソリューション実現に関するイノベーションのベースになるのは、OSSの高い完成度と成熟したコミュニティの存在だ。

 この10年、アナリティクスソリューションにおいてもOSSによるイノベーションが続いている。Hadoopや人工知能ライブラリのオープン化など、大量多種のデータを蓄積、処理する技術による大規模計算能力の低コスト化に加え、クラウド環境というサービスの多様化も進んでいる。

 また、それらを個人でも十分使いこなせる時代になってきている。従来、商用の高価なソフトウェアを扱うのが主流で、分析を担当する部署は限定されていた。手法も統計分析に限られていたため、それ以上のことを実施するには、高級プログラミング言語を使って必要なアルゴリズムをビジネスユーザーが自身で開発する必要があった。

 しかし、今は高精度で複雑なアルゴリズムを、無償で誰でも利用できるようになってきている。

 またLinuxが登場した1990年代には考えられないほど、現在ではOSSの完成度、コミュニティのサポート体制も成熟してきており、もはや商用ソフトウェアのサポートと何も変わらないという意見も多い。

 そもそも、アナリティクスに必要な環境は、通常のシステム開発が満たすべき仕様である本番環境とは異なり、研究開発の環境に似ている面が多いため、すでにOSSでも成熟期に入ったという考え方もある。

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