日本でもデジタルビジネスの到来・進化は止まらない
前回は、 (UberやAirbnb、Facebook、Michelinといった)SMACS(Social, Mobile, Analytics, Cloud, Sensor)に関連するビジネスとそのエコシステムを指す「デジタルビジネス」の台頭を解説。エコシステムを支える一要素である「クラウド」関連のサービスやテクノロジの利用動向について、日本と海外の取り組み状況を紹介した。
多くの企業にとってデジタルビジネスへの変革は既に大きな経営課題になっており、クラウドサービスの単なる導入ではなく、積極的かつ最適な活用が求められている。
一方、多くの日本企業では稟議制度に代表される合議主義、ボトムアップ方式に起因した意思決定の遅さに加え、クラウドサービスへの投資目的が「ITによる業務効率化・コスト削減」ばかりに傾倒し、「自社の製品、サービスの開発強化」や「ビジネスモデルモデル変革」には直結していない現状であると指摘した。
前回の総括として、デジタルビジネス化時代のIT部門は、「既存システムの安定稼働に向けた維持運用」に加え、”As-a-Service”のデリバリモデルを駆使した「ITを活用した新しい経営・事業モデルやサービスの構築」が必要と指摘。この体制が可能なハイブリッド型のIT組織へのシフトが必須であり、デジタルビジネスモデルへ変革させていく旗手となるべきであると提言した。
今回提言するテーマと目的
本題に入る前に、クラウドサービス利用の実態についてさらに踏み込んで考察し、今回のテーマである「クラウド利用に向けた組織・役割の最適化」で提言する目的・狙いを整理したい。
総務省が発行した「平成26年通信利用動向調査」によると、日本企業におけるクラウドサービスの利用率が30%を超えているシステムは、「ファイル保管・データ共有」「電子メール」「用途不明(サーバ利用)」「社内情報共有・ポータル」と「スケジュール共有」であると報告されている。
日本企業が利用したクラウドサービスの内容(複数回答) 出典元:総務省 平成26年通信利用動向調査
この結果から、良く言えば「全社共通システム」を率先してクラウド移行できていると評価できるが、一方で「デジタルビジネスをけん引するデジタルテクノロジとしてのクラウド利用」とは言えず、積極的に消極的なクラウド利用をしているとも解釈できる。これではオンプレミス環境と比較して単に安いからクラウドサービスを選択し、既存システムの安定稼働に向けた維持運用を一部外注したとも言える。