4月26日、日本オラクルはイベント「Oracle Cloud Platform Summit Tokyo」を開催。「オラクルが考えるCloud Platformとは何かをご紹介する」(日本オラクル 取締役 代表執行役社長兼最高経営責任者=CEO 杉原博茂氏)内容で、ユーザー企業による事例、それをバックエンドで支えるオラクルのテクノロジが紹介された。
基調講演では、ミッションクリティカルな既存システムをどうクラウド化していくのかという課題に取り組むNTTデータ、モノのインターネット(IoT)を活用した新しいタイプのシステムを構築したソフトバンクの2社が登場した。
NTTデータは、2015年度にシステムインテグレーターとして取り組んだシステム開発のうち、クラウド対応は7%だったことを明らかにしながら、「基幹システムのクラウド化はまだ実現していない。クラウドへの移行は、システム更改のタイミングでしか実現しないだろう。5年10年というスパンでの取り組みとなる」と、レガシーシステムがクラウドに置き換わるためには、長期的な取り組みが必要であると説明した。
ソフトバンクは、瀬戸内海にある離島豊島で展開している、観光に使う電気バイクのレンタルサービス事業「瀬戸内カレン」のバックエンドでCloud Platformを利用している事例を紹介した。
ソフトバンクは「プレゼンテーション段階から実際に動くものが提供され、2週間で実装、展開を実現し、その後、数回の機能拡張が実施されている。非常に早い展開でオラクルのPaaSに対する印象は極めて良い」と短期間にシステムを構築できたことを明らかにした。
オラクルが提供するPaaSが信頼性、安定性、可用性が求められる従来型のエンタープライズシステム、スピードや俊敏性、DevOpsなどが求められる新しいタイプのシステム開発という、相反する指向をもったシステムのどちらにも対応できることをアピールし、競合が激しいクラウドでのオラクルの特性だと説明した。
日本オラクル 取締役 代表執行役社長兼CEO 杉原博茂
Cloud PlatformはPaaS+IaaS
基調講演の冒頭、日本オラクルの杉原氏は同社が考えるクラウドは、「Agility、TCO、Easy of Use(迅速性、総所有コスト、使いやすさ)」という3つの要素を持っているものだと説明。その中で、今回のイベントのテーマであるCloud PlatformはPaaSとIaaSの両方の要素を持ったものだと説明した。
「競合のクラウドベンダーが提供しているのは、例えばA社やM社が提供しているのはIaaSだけで、これからPaaSを提供しにいこうとしているところ。S社はSaaSを提供し、開発プラットフォームを提供しようとしていると言っているが、やはりSaaSの中での話。それに対しオラクルはPaaSとIaaSをくっつけて提供している。これは基盤が安くなっただけではシステムは動かないから。インフラの上に運用管理、ID管理、アナリティクス、コンテンツ管理、クラウド連携、アプリ開発など全部くっつけて提供しているので使い勝手が良くなる。しかも、料金の中に保守料など全て入っている」と競合製品と比較した際の優位性を強調した。
また、提供するクラウドのベースとなるハードウェアについても、「単にホワイトボックスを買ってきて並べるだけではない。チップまで内製し、サーバ、エンジニアドシステム、ストレージ、アプリケーションまでトータルで提供している」とアピールしてみせた。
日本オラクル 副社長 執行役員 クラウド・テクノロジー事業統括 石積 尚幸氏
続けて、副社長 執行役員 クラウド・テクノロジ事業統括 石積尚幸氏が登壇。Gartnerが提唱する、従来型エンタープライズシステムに求められる信頼性や安定性などを実現する技術と、俊敏性やDevOpsなどに対応する新しく革新的なシステム開発技術の2つが必要となる、バイモータルIT時代に向けたオラクルのクラウド技術を次のように説明した。
「クラウドの中で使われているコンポーネントは、オンプレミス時代から使ってきたものばかりで、昨日今日出てきたものではない。つまり、お客さまは使ってきた技術をそのままクラウドでも使えるようになる。これらの技術は信頼性が高いことが担保されている。これは他社にはない大きな強みだといえる。俊敏性、革新性についても以前から取り組みを進めており、同様にこれをクラウドに提供する。さらにクラウド連携、クラウド運用管理まで一貫したクラウド環境を提供していることが大きな強みといえる」
具体的にはPaaSは現在、8つのカテゴリに30のサービスを提供。IaaSについては3つのカテゴリに15サービスを提供している。
既存のエンタープライズ資産をクラウド化する際の新しい試みが「Oracle Cloud Machine」だ。これはOracle Cloudで利用しているものと同じ構成のハード、ソフトなどを顧客のデータセンターなどに設置、運用や監視はオラクルのスタッフが担うという新しいスタイルのパブリッククラウドサービスと言える。