最近の経営幹部の間で交わされる話題の1つに、企業における「デジタル変革」がある。しかし、組織のデジタル変革はどのように起きるのだろうか。
Altimeter GroupのアナリストBrian Solis氏は、2016年4月に発表したレポート「The Race Against Digital Darwinism:Six Stages of Digital Transformation」(デジタル進化論との競争:デジタル変革の6つ段階)の中でこの問いに対する答えを追求している。Solis氏は、デジタル変革にまつわる議論の多くはITの視点から行われていると指摘し、テクノロジが大きな役割を果たすことは確かだが、顧客の体験を中心とした人間からの視点も重要だと述べている。
つまり、デジタル変革はデジタル顧客によって促進されるということだ。
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しかし、これだけではデジタル変革とは何かという問いに対する答えにはならない。デジタル変革の定義は流動的だが、Altimeterはこのレポートで、次のような定義を採用している。
「顧客と従業員に新たな価値をもたらし、変化を続けるデジタル経済環境で効果的に競争力を発揮することを可能にする、テクノロジ、ビジネスモデル、およびプロセスの再編成、あるいはそれらに対する新たな投資」
多くの企業は、部門間で協調する必要性を認識しないまま、チャットボットやモバイルに関する取り組みなどの分野で、従来とは本質的に異なる活動を始めている。しかしSolis氏は、この種の取り組みは経営陣のリーダーシップによって進められているわけではないと述べている。
「信じられないかもしれないが、多くのデジタル変革の取り組みは(そう呼ばれているかどうかは別として、それにつながるものは)、リーダーシップなしに起こっている。経営幹部が『デジタル変革を進める必要がある』と言っている企業はほとんどない」とSolis氏は言う。
むしろ、デジタル変革は組織内で変革を推進する存在である「チェンジエージェント」によって進められている。チェンジエージェントは証拠を集め、人を集め、協力して取り組むように説得する必要があるため、法律家や応援団、政治家のような働きをする。この動きは、経営幹部からの支援を必要としない時期に、組織の中から生まれてくる。
自分の企業がデジタル変革の最中にあるか、その方向に向かう必要がある場合、組織のデジタル変革の成熟度を示す青写真が必要になる。この記事では、その青写真としての役割を果たす、Altimeterのレポートで説明されている6つの段階について紹介する。
1.従来通りに事業が進められる段階
リスクを嫌ったり、従来の事業を維持しようとしている組織は、6段階のうちの第1段階である、「従来通りに事業が進められる」段階にある。この段階では、ロードマップのあちこちにデジタルの要素が見られるものの、優先順位は低く、多くの場合経営陣は変化に抵抗する。これらの組織のロードマップは、顧客の体験ではなくテクノロジの観点に基づいて作られている。
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