EUではビジネス創出やビジネスの変革を担う「eリーダー」育成が進む
ECでは、グローバル化やビジネスの急激なデジタル化などの状況を鑑み、ヨーロッパの産業の競争力の強化とそれに伴う雇用の創出が急務であるとの認識のもとに検討を行っている。そこで提唱されているスキルとして「eリーダーシップ」がある。eリーダーシップは、デジタルイノベーションと産業変化をリードするために重要な能力であり、戦略的リーダーシップとビジネススキル、ITスキルを含み、どれも欠かせないものだとされている。
eリーダーシップに必要なスキルとして、次の3つの構成要素が定義されている。
・戦略的リーダーシップ(Strategic Leadership)
さまざまな領域の専門家をリードし、機能的、地理的な境界を超えて集団に影響力を与える能力のこと。創造性やコミュニケーション力、顧客ニーズの理解力なども含まれる。
・デジタルに関する実務能力・知識(Digital Savvy)
イノベーションの機会としてデジタルテクノロジトレンドを活用し、ビジネスパフォーマンスの変革と創造を行う、主にITや通信に関する技術的な能力のこと。データ分析力なども含まれる。
・ビジネスに関する実務能力・知識(Business Savvy)
事業と経営モデルを革新し、組織に価値を提供する能力のこと。ビジネス分析能力やプロジェクト管理能力など、ビジネスを進める上で必要な能力も含まれる。
このeリーダーシップに関しては、ECが主体となって調査を行っており、eリーダーシップを発揮する人材「eリーダー」の人材数の把握や今後の需要予測、政策ロードマップなどが作成されている。それらの成果は、今後の政策立案に役立てられ、ヨーロッパのデジタルイノベーションにおける人材のスキル不足や、ギャップ、ミスマッチの軽減に寄与することが期待されているとした。
EU(28か国)におけるeリーダーの人材数は、2015年には約62万人のeリーダーが存在すると推計されている(IT人材の全体数は約754万人)。
また、その他のEUの産業強化の取り組みとして、「Key Enabling Technologies」(KETs)の提唱がある。KETsは全産業分野のイノベーションの基礎を担う技術であり、そこではITスキルも欠かせないとされている。KETsに必要なスキルフレームワークには、複数の専門性に関わるスキルや、アントレプレナーシップ、他者との関わりにおいて必要になるコミュニケーションなども含まれている。
一方、日本におけるeリーダーに該当する人材についての取り組みとしては、「IT融合人材」についての取り組みなどが存在するが、一層の進展が期待されるとした。
所属する部門についても推計が行われており、eリーダーの59%がIT関連部門ではないビジネス部門に所属しているとしている。さらに具体的な能力要件については、起業家および急成長している中小企業に対して調査を行った結果を分析し、まとめたものが発表されている。
IT人材白書はIPAが毎年、IT企業やユーザー企業、大学など教育機関を対象としたIT人材動向調査、およびIT技術者個人を対象とした意識調査を行い、調査結果をまとめて発行している。