独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は4月27日、「IT人材白書2016」を発行した。今回の白書では、IT企業やユーザー企業の取り組みのほか、情報通信業におけるIoTの担い手であるネット企業および部門、製造業等のR&D部門に対して、IoT時代への対応状況や人材動向について調査を実施。IoT領域に事業を展開している企業や人材は限られている現状が浮き彫りになった。
IoT活用状況は、消極的なIT企業とデータ活用が進むネット企業で乖離
IT企業に対し、“現在実施している事業”と“今後3年間程度の間に新規/拡大を予定している事業”をたずねたところ、「IoT関連サービスの開発・提供」を現在行っていると回答したIT企業の割合は、従業員規模1001人以上の企業を除き10%程度に留まっている。
また、今後「新規実施・拡大予定」があると答えた企業の数も、300人以下では15%程度、301人以上1000人以下の企業でも25%弱であった。現状では、IoT関連サービスの開発・提供を行う意志のある企業は、従業員規模の大きな企業に偏っている。回答しているIT企業には、受託開発を主業務とする企業が多く、IoT関連の委託業務は活発に発注されているとは言えない状況だ。
情報通信分野に該当するIoT関連サービスは、スマートフォンの普及などにより、他分野に比べ急激に進行している。この分野のサービス提供、開発の役割を担っているのは、調査対象の企業分類では「ネット企業および部門」が多いと考えられる。
IoTに関する事業の実施状況を、ネット企業および部門に対して尋ねた結果、「ヒトにより発生するデータの取得活用」や「クラウド上でのデータ蓄積・分析用アプリの利用」を「実施している」割合は約3割であり、実施割合が他の選択肢に比べて高い割合であった。なお、今後さらに高度なIoTサービスに向けての実施が期待される「データ分析時のAI・機械学習」を「実施している」割合は現状では10%強だった。
ネット企業および部門におけるIoT関連技術を活用した新事業・新サービスの実施方法(IPA提供)
製造プロセスやモビリティ分野などのIoT化に関しては、製造業等のR&D部門の動向が、今後の進展を図る上での参考となる。IoTに関する事業の実施状況を尋ねたところ、センサやGPSといったハードウェアである「機器からの自動データ取得活用」を「実施している」割合が、23.6%と最も高かった。「機器、ヒトのデータ分析・活用(ビッグデータ活用)」を「実施している」割合が15.1%と続いている。
R&D部門におけるIoTに関する研究開発の実施状況(IPA提供)