オープンイノベーションには何が必要か--スタートアップイベント「Slush」の挑戦 - (page 2)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)

2016-05-12 18:21

――労働人口減小、大企業とベンチャーの連携というトピックは10年以上前から言われてきていますが、オープンイノベーションというキーワードの浮上や、その取り組みが加速したのはここ1~2年という印象があります。それはなぜでしょう。

Antti氏 ここ数年で、日本でもパラダイムシフトを考える人が増えました。それを加速するためにはダイバーシティ(多様性)も必要ですし、もっとさまざまなことに挑戦する必要があります。そういった認識が強まってきたことと、そこを変えていこうというステークホルダーが増えたためだと思います。

加治氏 私の視点では、3つあると思います。ひとつは東日本大震災があったこと、もうひとつは震災に関連してTwitterやFacebookといったソーシャルメディアが普及したこと、そして3つ目は政権が安定していて、その政権がすごくイノベーションを振興しているということです。


アクセンチュア チーフ・マーケティング・イノベーター 加治慶光氏

 ソーシャルメディアの普及によって、世界を意識する人が増えました。ウォールストリートやシリコンバレーで何が起きているかをすぐに知ることができるようになり、英語を勉強しないといけないと考える人、日本でも同じことができないかと考え、そうした人たちが互いに連携できるようになりました。

 政権の安定に関して、現政権は発足後5年が経ちますが、それ以前はころころと変わっていました。これでは根本的なパラダイムシフトは起きません。3~4年経っても支持率が40~50%ある政権は久しぶりですし、政権はかなり精緻に考えられた政策を、納得感を持って進めているという印象です。そうすると経団連も政権を評価して、話を聞いてアクションを起こすようになります。

 その政権が今、イノベーションベンチャーの創出を掲げています。そして新たな改革として、「国際的イノベーション・ベンチャー創出拠点の形成に向けた新たな大学・大学院制度の創設」「『シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト』の推進」「グローバルなベンチャーエコシステムとの連動」を挙げています。2020年に大規模なグローバル・ベンチャーサミットを開催を目指すなど、まさにこちらに向かっていると感じます。

――ではそのイノベーションを生み出し続けるために日本に必要なことは何でしょうか。

Antti氏 失敗できる環境を作ることです。1950年代から1990年代まで、日本は非常にうまく成長したと思います。日本の自動車や家電製品は世界一の評価を受けるまでになりました。そこには日本独自の発明もありましたが、自動車を発明したのは日本ではないですよね。既存のものをよりよくするという漸進的イノベーションで成長したわけです。そして日本はフォロワーからリーダーになったのですが、そこのパラダイムシフトがうまくできていないと思います。リーダーになると模範がない。自分が模範になるしかないのですから、失敗をたくさんして試行錯誤していく考え方が必要だと思います。

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