オープンイノベーションには何が必要か--スタートアップイベント「Slush」の挑戦 - (page 3)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)

2016-05-12 18:21

――「失敗ができる環境や社会ではないためにイノベーションが起きない」という議論自体が延々と繰り返されている印象があります。この状況を打開するにはどうしたらいいでしょう。

Antti氏 よく言われるのは規制緩和ですが、トップダウンとともに私は草の根運動から始まると思います。よくパネルディスカッションでも、「失敗がしやすい環境が必要です」「もっと英語を話しましょう」「女性に機会を与えましょう」と、いつも同じ結論になって、しかもディスカッションが終わっても誰も行動しませんよね。Slush Asiaではそうした挑戦ができるようにしたいという思いがあります。ディスコで誰も踊っていないときは踊りにくいですが、誰かが踊り始めると踊りやすいですよね。私たちはそういう模範になりたいと思っています。

加治氏 私はわりと楽観的に考えています。というのも、日本人には“締切効果”が有効だと思っているためです。つまり、戦略的にいろいろなことを組み合わせて考えるよりも、何月何日までに何をせよといわれると夏休みの宿題を必ず美しく仕上げてくるのが日本人の特性ではないでしょうか。

 もうひとつ、「横並び」が好きな企業が多い点に期待しています。期日を決められると進む“締切効果”のテーマに太陽光発電や電気自動車の普及などを設定すれば、日本の環境技術はすごく進むわけです。そして今、2020年という“締め切り”に向けて大企業がこぞって「イノベーション」と言い出していますから、状況は打開できるのではないかと思います。

――Slush Asiaがオープンで、なおかつ失敗してもいい場所ということですが、具体的なエピソードはありますか。

Antti氏 たとえば、Slush Asiaではピッチコンテストもすべて英語でやるという大胆な目標を立てました。そこについてはチームの中で議論が交わされました。発表は英語でできても、質問されたら答えられないのではないか、などですね。でも、最終的には小さな失敗の可能性があっても、これはやるべきだということで実施しました。

 また、2015年のピッチコンテストで2位になったファストメディアという会社は、英語のプレゼンが不安と言うことでピッチトレーニングを実施していました。イベントの3~4カ月後に3億円を調達できたといいます。心配もたくさんありましたが、振り返ると失敗できる場を提供して良かったことのほうが多いです。

 日本のスタートアップが新しいプロダクトを作るときには、最初から日本市場だけではなくて、世界で大きな影響を及ぼそうという意気込みが欲しいですね。これまで日本のイベントは日本語だけでしたが、日本語だけでは世界へのチャレンジがすごく難しくなってしまいます。そこでSlush Asiaを練習の場、自信がつく場にできればと思います。また逆に、日本に来たいと思っている優秀な外国人もたくさんいます。そういう方にも来ていただきたいと考えています。


SLUSH ASIA 音楽フェスのような体裁

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