オープンイノベーションには何が必要か--スタートアップイベント「Slush」の挑戦 - (page 4)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)

2016-05-12 18:21

――大企業がスタートアップとの連携やオープンイノベーションに取り組むとき具体的にはどのようなアクションが必要でしょうか。

Antti氏 最初は何も考えず興味や形から始まっていいと思います。この分野は日本の生活を変えていくという確信をもっていて、とりあえず何らかの形で先進企業と関わり、協業や連携を模索するべきです。

加治氏 ダイバーシティを受け入れて、女性や外国人など、さまざまな人材を雇うことだと思います。安倍政権の政策は、ダイバーシティの問題を経済問題と定義した一番最初の政策といえると考えています。基本的には年金問題は厚労省担当だったのですが、それをきちんと国の戦略として女性をきちんと働ける仕組みを作りましょう、なぜならば労働人口が減っているからという、経済問題として捉えなおしています。

 一方、高度成長期で企業に残ったのは、「(多様性など)人の違いはコスト」という認識です。一般的に、全然違う2人を雇うことより、同じような人を2人雇うことが良しとされますが、それは調整コストが発生するためです。できるだけ同じような人を大量生産していって、安定した成長を実現するのは、社会が右肩上がりのときの手法です。

 かつてはまだまだ多様な人材を受け入れることは社内の年功序列を崩すからとか、給料の格差を生むからとか、そういう理由で嫌がっていたのですが、イノベーションを起こすには多様性こそ重要です。

 いかに早くそういう組織に組み替えられるかが大事なのではないかと思っています。そうなると、スタートアップのような全く違う文化を受け入れることに慣れてくるので、年功序列に対する自己否定のようなものがきちんと確立されていくと思います。ただ、これは結構難しくて、年功序列で評価していたところを実力で評価しなくてはいけない。KPI(評価指標)をどうするか、どうやって給料を変えるのかなどの課題があります。

――オープンイノベーションの組織をきちんと機能させるには、どのような人材が必要でしょうか。

Antti氏 たとえば、海外事業開発を海外事業開発室だけの仕事にするとうまくいかないパターンが多い。そのため、マインドセットを組織全体に広げる必要があると思います。同じように、オープンイノベーションの部署を限定してしまうと、最初はうまくいっても継続しにくいと思います。オープンイノベーションに関連ない部署、ダイバースではない部署にも同じようにマインドセット、考え方があると一番うまくいくと思います。

加治氏 よく「T字型人材」といいますよね。専門領域がある人、経営全般を俯瞰できる人、いろいろな知識がある人、そういう人はマネジメント領域に適していると思います。それから、それから、John Krumboltzという教授が発見した「Planned Happen Stance(計画された必然)」というものがあります。そのうちのいくつかの要素――好奇心(Curiosity)、持続性 (Persistence)、柔軟性(Flexibility)、楽観性(Optimism)、冒険心(Risk Taking)――を持っている人が偶然を必然の変革の力にしていくことができる要素があるというものです。そういった人がいるといいですね。

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