こどもの日に小学生1万人がプログラミング体験--「Hour of Code Japan」イベントレポート - (page 2)

神谷加代

2016-05-12 18:16

全国で1時間のプログラミングワークショップを一斉開催

 オープニングイベントの後、子どもたちは低学年と高学年に分かれて、「Hour of Code」のプログラミングを体験した。

 Hour of Codeとは、米国の非営利活動法人「Code.org」が主唱する子ども向けのプログラミング教育推進活動。同団体はHour of Codeのウェブサイトを通して、5歳以上の子どもが1時間程度でプログラミングの基本概念を体験できるチュートリアルを提供しており、今回のワークショップでもそれらが用いられた。

 Hour of Codeのチュートリアルは、子どもたちの興味・関心を高めるために人気ゲームやアニメのキャラクターが使用されていることが特徴だ。当日のワークショップでは、低学年には「アングリーバード」、高学年は「マインクラフト」のチュートリアルが使用された。与えられた課題をクリアすれば次に進むことができ、“順次実行”や“繰り返し”といったプログラミングの概念がゲーム感覚で体験できる。


「Code.org」が提供するチュートリアルでプログラミングを体験

 低学年のグループでは、コンピュータの操作が未熟な初心者の子どもたちが多く参加していた。命令ブロックをつなげる操作がぎこちない子どもや、「上手くいかなかったら、リセットを押して」など、基本的な操作を各テーブルのチューターから教えてもらう場面が多く見られた。逆に高学年のグループは、どんどんステージをこなしていく子どもが多かった。子どもたちは、分からないところをチューターに質問しながら、各自でトライ&エラーを繰り返して進めていた。


チューターの指導を受けながらコンピュータを操作する様子がみられた

 全ステージを終えた子どもたちには修了証が渡された。子どもたちからは感想として「いつも動画でマイクラを見ているけど、プログラミングのマイクラも面白かった」(高学年)、「自分でいろいろやってみたり、考えたりして楽しかった」(高学年)、「ちょっとむずかしかったけど、もう1度やりたい」(低学年)などの声が聞かれた。

 子ども1万人の参加を目指した今回のイベントでは、同様のワークショップが全国各地の連携会場でも同時開催された。イベントの趣旨に賛同する学校、塾、企業、家庭などを公募で集め、東京、埼玉、神奈川、大阪、宮城、徳島など全国110カ所の会場に子どもたちが集まり、プログラミングを体験した。


全国110カ所で1万人の子どもがプログラミングを体験した

小学校のプログラミング必修化、課題は指導者育成

 今回のイベントを主催したみんなのコードは、公教育におけるプログラミング必修化の推進活動を担う団体だ。2015年に発足し、Hour of Codeの日本国内認定パートナーとして、日本国内におけるコンピュータ科学教育の普及啓蒙活動を行うとともに、学校教員を対象としたプログラミング教育指導者の育成事業も手掛けている。具体的には、プログラミング教育指導者研究会を定期的に開催したり、「認定指導者制度」を2月から開始するなど、積極的に指導者育成を支援している。

 代表理事の利根川氏は、小学校におけるプログラミング教育必修化について、「4年後の実現に向けて課題は多い」と話す。しかし、その一方で「授業として始めるのには課題が多いが、授業外の活動としてプログラミングが学校の中に入っていく余地はある」と意気込みを語る。また、IT人材が集まる都市部とそうでない地方において、プログラミング教育に格差が生じやすいとの指摘もあるが、これについても利根川氏は「地方ではプログラミング教育が難しいと思われがちだが、地方は地方で行政が動くと意外と早く事が進むケースもある」と話す。地方では、早い段階からキーパーソンにアプローチできるため、インパクトを与えていけるというのが利根川氏の見立てだ。

 公教育におけるプログラミング教育は課題も多く、教育機関だけの努力で実現するのは難しい。IT企業をはじめとした産業界の協力や、行政の支援も求められるが、学校がこれまで以上に社会とつながることも必要だ。今回のようなイベントに、どれだけの教育関係者を巻き込んでいけるのかが今後の課題だといえるだろう。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]