著書「Heartificial Intelligence」(Artificial Intelligence:AIと人間の心を組み合わせた造語)の冒頭でJohn C. Havens氏は、人間の価値は非常に意味のあるものなので、AIが自ら進化を遂げるようなことが起こる前にその影響について考えるべきだと説く。

Heartificial Intelligence: Embracing Our Humanity to Maximize Machines ● 著者:John C. Havens ● 出版社:Tarcher Penguin ● 304ページ ● ISBN: 978-0-399-17171-0 ● 16.95ドル
テクノロジジャーナリストのHavens氏は、TEDxのスピーカーであり元広報担当者でもあった人物だ。Heartifcial Intelligenceにて同氏は、われわれがAIを認めようと認めなかろうとAIの世界は必ずやってくるということを前提に話を進めている。つまり、AIがいつわれわれの世界に入ってくるのか、またどのように入ってくるべきかを考えるよりも、AIが今後どのように発展していくかを考えるべきだとしている。
一般の人はAIのプライバシーやセキュリティの仕様が気になるようだが、Havens氏はその価値、いや倫理の仕様に関心を示している。同氏によると、いままでAIの倫理についての議論は、すべてその利点に対する多大な期待か、人間に差し迫っている悲運についてしか語られておらず、そのことをHavens氏は懸念しているのだ。
執筆後に起こった出来事
Havens氏が同書を執筆したのは、さまざまな出来事が起こる以前のことである。同氏は各章を架空の未来のシナリオで始めているが、Googleが同社のロボット事業であるBoston Dynamicsの売却を検討しているという話は、彼の描いた未来のシナリオを覆した。また、同書が出版されたのは、Google傘下のDeepMindが開発したAlphaGoというAIソフトウェアが韓国の囲碁王者であるLee Sedol氏に4勝1敗で勝利する以前のことだが、DeepMindの創業者であるDemis Hassabis氏とHavens氏は確実に同じ世界観を持っている。
昨年、王立協会にて行われたAI発展の最新状況を議論する場にて、Hassabis氏はAIの展開方法や管理方法を考慮することの重要性を説いた。Hassabis氏は単にうわべだけで言っているのではない。DeepMindが2014年にGoogleに買収された際、同社は買収に合意する条件としてGoogleにAI倫理委員会を設けるよう求めているのだ。すでにGoogleでは倫理委員会を設けたようだが、所属メンバーは未だ明らかにしていない。
Heartificial Intelligenceは大衆に向けた内容ではあるが、教科書のように構成されており、長いホワイトペーパーのようでもある。前書きが約25ページにも渡っており、それが概要のようにも思えるが、きっとHavens氏はこの概要で出版社に売り込んだのではないだろうか。
前書きが終わると、経済、雇用、プライバシー、人間の価値といった分野にAIがどういった影響を与えるのか、ひとつひとつまとめられている。各章の最後には、その章で取り上げた主なアイデアが要約リストとして書かれている。最終章では、読者が自らの価値を測定するための問題が用意されている。
全体的な効果は同書が途切れ途切れになっているような印象を与えるものだが、Havens氏は読者に考える方法を教えようとして長々とした議論を繰り広げているのではない。Havens氏は、同氏が提示した問題点に対し、読者が自らそれぞれの答えを導き出してほしいと考えているのだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。