クラウドがメインストリームになる中、”なぜクラウドか?”という問いに対する答えは人により異なるだろう。
Oracleの最高経営責任者(CEO)、Mark Hurd氏
クラウドを推すOracleの最高経営責任者(CEO)、Mark Hurd氏が4月、同社が米オーランドで開催した業界向けイベント「Oracle Industry Connect」で経済、ビジネス、人口、そしてシステムの4つの面からクラウドを導入するメリットを分析した。
世界経済は不安定な要素が多くサイクルも速くなっている。Hurd氏は最初に、S&P500の2008年から2015年の売上高の推移の表を見せる。年平均成長率は1%以下。売り上げはほとんど伸びていない。
収益はどうか。1株当たり利益は5%増えている。売り上げよりも利益の方が成長しているということは「支出を抑えたことになる」とHurd氏は分析する。もちろん、この間に新しい企業が生まれ、消えていった。
S&P500企業の売り上げは2008年から2015年の間、1%以下しか増えていないが、1株あたり利益は約5%増加した
IT支出はどうか。2011年から2015年の世界のIT支出はGDPの約3%を占め、2兆ドル規模。少し前まで右肩上がりだったIT投資だが、このところ横ばいで推移している。そればかりか、2015年は前年比5%のマイナスとなった。
「おそらくここ約15年でエンタープライズIT市場がマイナス成長になったのは初めて」(Hurd氏)
IT支出は2015年、マイナス成長となった
さて経営環境はどうか。CEOの任期は平均して4.5年――四半期にすると18四半期だ。売り上げが伸びない時代、投資家の期待に応え、成果を出さなければならない。
「市場の平均を上回る成長を遂げてシェアを増やすーーこれを短期的に実現するというプレッシャーがある」とHurd氏。トランスフォーメーション(変革)や変化などという言葉が注目される背景には、このような厳しいビジネス環境があるとした。
人口動向も変化している。1980年代から2000年代初頭に生まれたミレニアル世代が大きな購買力を持つ層となった。
ミレニアルはデジタルとインターネットに早くから親しんだ層であり、従業員としての存在感も大きくなっている。Hurd氏によると、Oracleでも35%がミレニアル世代で、ベビーブーマー(戦後生まれ)は18%、残りがジェネレーションX(1960年代〜80年代に生まれた世代)という。ミレニアルはさまざまな特徴で語られるが、Hurd氏は「本質は変わらない」と見る。
「競争に勝ちたい、学びたい、キャリアを築きたい……これらはミレニアル世代も同じだ。異なるのは育った際に周囲にあった技術」とHurd氏。直感的で容易に操作できるUIやマルチデバイスなど「ミレニアル世代のニーズ」と言われるものは、われわれ自身も同じように求めているとした。
ミレニアルだけではない。平均寿命が長くなったことで、退職の年齢も上がる可能性がある。このように、新しい世代だけではなく、これまでの世代も同時に存在することになる。
「世代にして3.5世代が共存することになる。これはITには大きな影響を与える」とHurd氏は見る。雇用形態も変わっており、正社員だけはなくなる。
例えば、Uberでは従業員の数が16万人に達しているが、そのうちフルタイムの正社員4000人程度。遠隔から働く人など就労や雇用形態も大きく変化している。