古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」

今、なぜ「Docker」なのか

古賀政純(日本ヒューレットパッカード) 2016年06月06日 07時00分

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 こんにちは。日本ヒューレットパッカード オープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリストの古賀政純です。

 今、欧米のIT部門や開発者の間で大きな注目を浴びている「Docker(ドッカー)」は、企業のビジネスにどのような変革をもたらすのでしょうか。従来型のIT基盤とは何が異なり、どのような効果が得られるのでしょうか。Dockerは、「仮想化技術の一種」「開発者が楽になるソフト」と言われることがありますが、もっと高い視座で見るとDockerがもたらす革新性が見えてきます。この連載では、Dockerの技術革新によってもたらされるビジネス変革、欧米のIT企業が取り組む「エンタープライズ向けDocker」の最前線などを解説します。さらに、Dockerによる環境構築、基本的な利用法、注意点などについても、筆者の経験を交えながら具体的に解説します。

今、企業や組織体に求められるものとは?

 世界中の企業は、顧客の声(ニーズやウォンツ)をどのように素早く把握するか、また、製品やサービスの質の向上をどうやって実現するかを常に追い求めています。規模の大小こそあれ、膨大な市場調査報告書や、紙や電子掲示板、SNSで得られる顧客アンケートなどをマーケティング部門の人間が目視で精査、勘案し、ストラテジストなどの支援を仰ぎながら事業計画を立案し、企画、製品開発、営業活動に活かすといった企業活動が一般的に行われています。

 しかし、顧客ニーズは多様化し、ニーズそのものの変化のスピードも速くなっている昨今、膨大な情報の中から一つ一つの顧客の声を文書化したものを生身の人間の目視によって把握し、的確な経営判断を下すことが困難になってきているのも事実です。そのために、具体的な顧客の声が得られる前にそれらを「高精度に予測」し、さらに、顧客のニーズ・ウォンツの変化に迅速に応えることができる柔軟性の高いIT基盤が求められるようになってきました。

 このようなIT基盤を実現するために、欧米の企業では、Docker登場以前から、徹底した「自動化」「省力化」に加え「知能化」に取り組んでいます。例えば、顧客が利用したいアプリやIT基盤をメニュー画面に用意しておき、顧客は用意されたメニューにあるIT基盤を自分で選択して使用する「セルフサービスポータル」により、IT基盤がユーザーに自動的に割り当てられます。これには、高度なクラウド技術による「自動化」の仕組みが必要です。

 また、ビッグデータやスーパーコンピュータの分野においては、サーバの台数が増大するため、サーバの電源投入、ハードウェア設定、OSのインストール、アプリケーションの設定を無人化し、さらに、追加した新しいサーバの環境と現在のサーバの環境の違い(差分)をすぐに比較できるツールを導入することで、調査にかかる手間を「省力化」するなどの仕組みが導入されています。

 「知能化」については、SNSに投稿された特定企業の製品に関するネガティブあるいはポジティブな発言を製品担当者が目視でチェックするといった属人的な手作業をできるだけ排除し、知能化したITシステムによって、顧客の刻々と変化する声を把握し、予測の精度を向上させ、製品開発にフィードバックし、次期製品の機能改善やサービス改善に結び付けようという取り組みなどが挙げられます。また、公共システムにおいては、従来、人間が行っていた監視カメラによる監視業務を知能化したIT基盤が担うことで、犯罪防止などに役立てる取り組みも行われています。

 このように、今までにない「自動化」「省力化」、そして高度な「知能化」といった取り組みがIT基盤に求められており、IT基盤そのものが顧客の声とともに刻々と変化し、高度に複雑化しているのです。


企業に求められるものが刻々と変化している

 そのような企業や組織体における業務の高度化に対し、今、IT基盤に採用される技術が大きく変わろうとしています。業務の高度化に対応すべく、従来にない斬新な情報技術や工学的手法を駆使する必要が出てきました。2016年現在、欧米の企業において注目されている情報技術としては、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)と人工知能を使ったビッグデータ利活用、ハイブリッドクラウド基盤、そして、開発・運用手法(一般的に「DevOps」と呼ばれます)などが挙げられます。

 人工知能を使ったビッグデータ利活用、ハイブリッドクラウド、開発・運用手法は、一見、Dockerと無関係のように感じるかもしれませんが、これらの最新の情報技術は、Dockerによって、その応用の幅が広がります。Dockerは、「仮想化ソフト」や「開発環境のためのソフト」という位置づけで紹介されることがありますが、実は、IoT・人工知能を使ったビッグデータ、ハイブリッドクラウド、開発・運用手法と呼ばれる最先端の分野において革新性をもたらす重要なソフトウェアがDockerなのです。


ビジネスを今以上に加速させるには、最新の情報技術と工学的手法が必要とされる。さらに、Dockerによって革新性がもたらされる

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