人材育成の新手法「アクティブラーニング」

失敗体験こそ最高の教育--Slush Asiaの運営が学生主体で成り立つ理由 - (page 2)

得能絵理子

2016-06-04 07:00

 「自分も世界を変えられる」――このセンセーショナルな事実が学生達を突き動かし、ROVIOの幹部らとともにSlushの前進となる勉強会が始まった。

 数十人で始まった勉強会は、やがて多くの人を惹きつけるようになり、今では全世界から1万5000人を集める一大イベントにまで成長。毎年、その影響力を考慮し、フィンランド首相、イギリス首相、中国副主席など、各国のトップが続々と訪問しており、世界的に注目されるイベントになったのだ。

 2014年、2015年とこのイベントにスピーカーとして呼ばれた起業家であり、投資家の孫泰蔵氏。こうしたイベントを日本でも実施すべきだと志の高い仲間らに声をかけ、Slush Asiaが日本にも導入されたのだ。

 Slushを生み出す母体となったのはヘルシンキのアールト大学である。どうしてこの大学からそんなすごいムーブメントが世界に広がっていったのだろう。アールト大学は、2008年にヘルシンキ工科大学、ヘルシンキ経済大学、ヘルシンキ芸術デザイン大学の3つの大学が合併して出来た大学だ。1、2年の時は各専門を学び、3年になると3つの学部の学生が「デザインファクトリー」という校舎に集まる。

 ここでは、各学部の学生がチームを作ってさまざまな企業からのオファーを研究。研究といってもただ論文を書くといったものではない。「プロトタイプ」、つまり試作品を作る。

「Slush Asia」

 工学、デザイン、ビジネスの3者がそろえば、最低限のアイデア具現化が可能。その試作品を作って教授のところへ。そして何度もダメ出しをされた後、企業プレゼンに行く許可が降りる。たかが学生のアイディアと思うなかれ。実際にそのプロトタイプの中から、世界的な企業に採用されたものもある。

 米スターバックスが机に置くだけで充電されるワイヤレス給電をサービスの一環として開始したが、これは実はアールト大学の学生らが開発したものだった。

 「私達がここで一番力を入れることは、『学生に失敗させること』です。ここは『失敗』が起きやすい場所なんです。『失敗』が起きれば、われわれの教育は成功したということができます」――。同大の教授の言葉だ。2014年、私はアールト大学を訪問した。3つの学部の学生がプロトタイプを作るデザインファクトリーと呼ばれる校舎は、まるでシリコンバレーのスタートアップ企業のような雰囲気だった。

「SLUSH ASIA」

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