SAPの経営幹部であるBernd Leukert氏は、もはや、企業が顧客を360度のあらゆる角度から把握するだけでは足らず、文脈に応じた知見を得る必要があると述べた。
Leukert氏は、米フロリダ州オーランドで開催されている、SAPの年次イベント「SAPPHIRE NOW 2016」の基調講演で、すべての企業は、いわゆるデジタル時代で成功するという共通の目標を持っており、そのためのソリューションは「ライブ」の顧客体験を提供することだと語った。
「長年の間、多くの企業が360度の視点から顧客を把握することが重要だと語ってきた。SAPはさらに進んで、文脈に応じた視点からの把握、個々の顧客の『ライブ』な視点での把握を実現する。この視点で把握すれば、顧客の頭の中を知ることができる。顧客の希望、夢、イメージを理解し、適切な時、適切な場所に、適切な製品を届けられるようになる」と同氏は述べた。
「もう、顧客に多くの質問をする必要はない。答えをすでに知っているからだ」(Leukert氏)
製造業者の製品提供における競争力を強化する手段として、SAPはUPSと協力関係を結び、HANAプラットフォーム上にインテリジェントな3Dプリンタのグローバルネットワークを構築する。
Leukert氏は、このソリューションは製造業者と顧客を直接結ぶ、初めての業界規模となるエンドツーエンドのオンデマンドソリューションだと胸を張った。
「3Dプリンティングは、アプリケーション生産プロセスの単純化および最適化を進めるだけでなく、新たなチャンスやビジネスモデルを創出する」と同氏は言う。
同氏は、この3Dプリンティングサービスを利用する最初の顧客として、米国の電機メーカーJabil Circuitと、精密運動制御システムメーカーMoogの名前を挙げた。
この発表は、SAPが今週開催しているイベントSAPPHIRE NOWでの一連の発表に続くものだ。これまでに、アナリティクスおよび機械学習に関する発表などが行われた。
米国時間5月18日には、SAPの最高経営責任者(CEO)Bill McDermott氏が、次の5~10年間で、機械学習、人工知能、拡張現実が大きなトレンドになるという予想を述べている。
同氏は基調講演で、「私は、知的なアプリケーションが企業での働き方と、企業外の取引パートナーとの協力の仕方を根本的に変えると強く信じている」と語った。
一方で、同社は「Cloud for Analytics」の名称を「SAP BusinessObjects Cloud」に変更し、アナリティクスと同社のSaaS(サービスとしてのソフトウェア)ソリューションを組み合わせる。また、オンプレミスでのアナリティクスを提供する「SAP BusinessObjects Enterprise」も発表した。
Leukert氏は、これらの製品の目的は、企業が適切な判断を下せるよう、アナリティクスに簡単にアクセスできるようにすることだと説明している。
「レガシーシステムから知見を得られたとしても、それを活かせなければ、あるいは活かすのが遅すぎたとすれば、どんな意味があるだろうか?これは明らかに、アナリティクスが今後企業のニーズに対して極めて重要になることを意味している」と同氏は述べている。
さらに同社は、「SAP SuccessFactors HCM Suite」に、職場における偏見の問題への取り組みとして、人材獲得プロセスを標準化するための新機能を追加する計画を発表した。
情報開示:本記事の著者は、SAPに同行してSAPPHIRE NOW 2016に参加した。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。