5月2日から4日間の日程で開催された「EMC World 2016」(ネバダ州ラスベガス)。EMCは10月までにDellによる買収が完了し、その後はDell Technologiesに社名変更される。
Dellの最高経営責任者(CEO)であるMichael Dell氏は、「今回の買収によって、企業にとって必要なITインフラを包括的に提供できる会社が誕生する。DellとEMCは強い補完関係にある」と、そのメリットを強調している。中堅小規模企業市場をカバーしているDellと、エンタープライズ市場に強いEMCが1つになることで、エッジからデータセンターまで、必要なソリューションを一気通貫で提供できるようになるというのが、そのメッセージだ。
EMCでアジア太平洋と日本を担当するプレジデントのDavid Webster氏は、「アジア太平洋日本地域は、人口やビジネスの成長率、ITシステムのスケールやサイズが急速に拡大している地域だ」と指摘する。同時に、同地域の企業を取り巻く外部環境は急激に変化しており、「投資の配分を見直す必要がある」と説く。

EMC アジア太平洋日本地域担当プレジデント David Webster氏
今回のコンファレンスでEMCは、「ビジネス環境をモダナイズするためには、システムの維持運用管理に投資を続けるのではなく、クラウドネイティブに対応した“第3のプラットフォーム”の構築に投資すべきた」とのメッセージを繰り返している。Webster氏も「インフラをモダナイズするには、『システムを構築する』のではなく、『システムを購入する』という発想が大切だ」と力説する。
サーバやストレージ、仮想化ソフトウェアなどを個別のベンダーから購入すれば、システム構築に時間と労力とコストがかかる。
それを解決するのが、ハイパーコンバージド(統合型)インフラストラクチャであり、今回発表したハイパーコンバージド ラックスケール システムの「VCE VxRack System 1000 with Neutrino Nodes」、オールフラッシュストレージアレイの「Unity」、2月に発表したラックスケール型オールフラッシュアレイ「DSSD D5」といった製品群であるというのが同社の主張だ。
今回のコンファレンスではDSSD D5のアップデートとして、ハイパフォーマンスデータベースとデータウェアハウス向けに事前構成した「VCE VxRack System with DSSD」も発表している。

EMCのコンバージドシステム。同社は今回のコンファレンスで1万8000ドル~のオールフラッシュストレージアレイのUnityを発表している
EMCはアジア太平洋地域のビジネスに必要な要素として、「新規需要(可能性)を予測する仕組み」「アジャイル開発の実現」「透明性と信頼性の実証」などがあるとしている。Webster氏は、「これらはビジネスのモダナイズに必要不可欠だが、(同地域で)実現している企業は少なく、いわば、理想と現実のギャップがあるのが現状だ」と指摘した上で「われわれはこうしたギャップを解消するソリューションを迅速に提供できる」とビジネスチャンスの可能性を語る。
特に、データのバックアップやコンテンツ管理、データセキュリティといった領域は、内部統制が確立していない企業も少なくない。こうした領域でも、Dellとの統合で包括的なソリューションが提供できるようになる。Webster氏は、「アジア太平洋地域は最もビジネスの成長が期待できる地域だ」と期待感を示した。