海外コメンタリー

伝説のイノベーター、W・ディズニーとS・ジョブズに学ぶ5つの教訓 - (page 5)

David Gewirtz (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2016-06-03 06:00

 そして、「iPhone」が登場した。領域が異なる技術の融合を試みた製品はiPhone以前にも存在したが、スマートフォンが携帯端末の市場を席巻し、それ以外の製品様式を駆逐する契機となったのは、iPhoneだった。「iPod」と電話を融合したiPhoneは、初代が発表された時点ですでに多くの消費者を惹き付けた。そしてJobs氏が後継機の「iPhone 3G」を「App Store」と共に発表したとき、不可逆的な革命が始まった。

 Disney氏も異なる領域の要素を融合させた。1930年代、アニメーションと映画は異なる領域の作品だった。アニメーションで制作された映画は存在しなかったのだ。物語を紡ぐのは映画の役割であり、アニメーションの役割はギャグで観客を笑わせることだった。映画は映像を動かし、観客の心を動かし、涙と笑いを誘った。一方、アニメーションは心に残らない、刹那的な笑いだけを提供していた。

 しかしDisney氏はそれ以上を求めた。彼はアニメーションを愛しており、そこに単なるドタバタ喜劇を超える未来の可能性を見出していた。アニメーションの特性を駆使すれば、かつて誰も目にしたことのない物語を観客に提示できると信じていた。

 1930年代には、ほとんどの映画はモノクロだった。CGアニメーションなど、もちろん存在しなかった時代だ。映画制作の黎明期から特殊効果は欠かせない要素だったが、常に物理的な制約の中に囚われていた。言い換えれば、特殊効果は物理的な仕掛けや錯覚を利用する必要があったのだ。

 アニメーションはそうした制約に縛られない。巨大な渦巻きに飲み込まれるシーンを撮るために、大量の水や絵の具で実際に渦巻きを再現する必要はない。アニメーションでは、すべてのシーンは、多大な労力を要する手描き作業によって1コマずつ制作される。長編アニメーション映画の制作には、膨大な人数のアニメーターによる気の遠くなるような作業が必要だが、空想力と、それを描き出す力があれば、心の中で想像した場面を観客に届けることができるのだ。

 完成まで数年を要した「白雪姫」は、制作中はDisney氏の愚行の象徴だと批判されていた。途方もない予算が注ぎ込まれ、何度も予算をオーバーし、何度もスケジュールが先延ばしされた。しかも、同作はアニメーションだった。75分ものアニメーションを座って観続ける観客などいないと思われていた。

 しかし、Disney氏はアニメーションと映画の融合が可能だと信じ、両者の融合がもたらす無限の可能性を夢想していた。こうして彼が世に送り出した希代の傑作は、観客の涙と笑いを誘うことに成功した。子供たちに安心して楽しめるスリルを与えた。アニメーションと映画という、それまで異なるものだと思われていた2つの芸術が融合し、まったく新しい分野の芸術が誕生した。

 さらにDisney氏は、古典的なおとぎばなしを自分流の再解釈で映像化するという決断を下した。古典を再解釈した長編アニメーション映画「白雪姫」は、Disney氏が統べるアニメーション帝国の礎となった。その後、Disney氏が歴史に名を残す功績を挙げたのは、ご存じのとおりだ。

 過去100年で最も優れた功績を残した2人のイノベーター。彼らに学び、テクノロジだけでなく、異なるアイデア、研究分野、芸術様式さえも融合させて素晴らしい魅力的な新製品を創造し、次に世界を変えることになるのは、あなたかもしれない。

 

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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